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売らないスモモ

 七月に入り、入道雲も現れるような空の下、実ったスモモを取りに行く。

 これが梅雨なら放りもするが、今年は例年にない空梅雨、続く真夏日、この果物にはちょうどいい。

 一本の木に、皆で群がり、赤いもの取り、大人は枝切り、高い枝に付いたスモモを子供たちに落としつつ、実を袋に詰めていく。

 これを食べると思えば食べきれぬ、豊かな気持ちになりはするが、これを売ると思えば急に貧しい思いがするものだ、と人に言えば、何の、売ると思い、金になると思ってこそ、人は豊かと思うだろうと返されて、そういうものかと思いつつ、それでもこの実が一袋、幾ら幾らと思ってしまえば、塞ぐ気持ちは変えられず、まあ、どうせいいのだ、売らないのだし、食べたり、人に配ったり、それが一番心地良いのだと、感覚は古の物々交換、難しいことなしで生きたいのである。

04/07/02

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