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ニワトリとヤマドリと

 けたたましい声がして飛び出すと、放し飼いのニワトリと、ヤマドリが喧嘩をしていて驚いた。

 ヤマドリは、色鮮やか、立派なオスで、廃鶏として引き取ったニワトリとは格が違う、生命力から姿形、殿様のように堂々として、ぼろいニワトリを虐めている。

 否、虐めているのではなく、メスとして見ているものか。

 驚くうちにヤマドリは、山の方へ逃げていき、奇妙なこともあるものだ、幾ら鳥のメスとオス、そうはいっても子はできまいなどと思ううち、数日経って再び来る。

 それが続くと人などは、ヤマドリの肉の美味さを聞くからに、何とか手に入らぬものかと、虫取り網など用意して待つが、それで捕まるはずもなく、何度も何度も、ニワトリばかりが追い回されて、ヤマドリもまた本懐を遂げず、三者三様、得するものない珍事件、そのニワトリを食ってからは、ヤマドリの姿も見なくなる。

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