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夕立と、ゲリラ豪雨と

 空梅雨に夏の空、午後に雷雲、夕立の来る。

 この夕立、都市にはもう来ないという、代わりにあるのがゲリラ豪雨、風情なく言い表されるものである。

 人と、人のものしかない都市ならば、風情のないのも仕方なく、風情のないその場所に、風情なきものが降り注ぐ、これも仕方のないことだ。

 木を切り、海を埋め立て、土を家を石の粉で固め上げ、自然を不自然にした結果、夕立はゲリラ豪雨、風はビル風、大地はヒートアイランドと、現象から言葉から、自然の要素は掻き落とされて、それが風情のないという、そういうことになるのだろう。

 こうして、言葉は死語となる。人が壊し、人が作り、人の暮らしから消えゆくものが先にあり、それから言葉が息を引き取る。

 死なないで──そう言いながら人工呼吸、学校教育に取り入れて、季語や古語、テストに出しても、まったく無駄だ。

 言葉の命は戻らない。延命措置を施す人が、脳死だの心臓死だのと、その違いを喚いていても。

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