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ハナアブ

 蜜色のアブが、夏を飛ぶ。

 アブと言っても、血を吸うものと、蜜を吸うものでは、姿形にも違いがあって、やはり血を吸うものはおどろおどろしい、蜜を吸うものはまるで危険を感じさせない、可愛らしいものである。

 ゆえに冒頭のアブは、無論蜜を吸うもので、日の光に透けるその腹は、何とも深い蜜色をしている、そこに蜜を溜めるわけではないにしろ、蜜からできたキャンディーのような、美しい色を透かせて飛び回る。

 この飛び方さえも、血を吸うものはハエやらハチと同じようだが、こちらのアブは点と転との瞬間移動、と思えば、宙にてホバリング、人の目の追いつかないほどに、二枚の羽を動かして、花から花へと飛び回る、忙しいようでありながら、ハチのようにはせかせかしないと思うのは、こちらも刺される心配が無く、楽に眺めるからなのか、青い空に透ける蜜色を、ただ楽しめるようである。

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