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河原の色と、山の色

 河原の生き物は、河原の色をしている。

 小石と藻の色、模様で隠れるオタマジャクシ、水辺の濃い石の背をしたカエルに、乾いた石の灰や青を真似したクモ、砂利を掘れば湧き出る黒い小さな甲虫は、その水に濡れた小さな石の黒にそっくりで、同じ生き物でも山とは違う、河原の色が染みこんでいる。

 見慣れないものだと思いながら、けれどこのオタマジャクシもカエルもクモも、黒い虫も、この河原のものなのだろう、他の河原へ行ってみれば、また見慣れぬものがいて、余所にはまた違うもの、また違うもの、そこで過ごし、暮らさねば、分からぬものがあるのだろうと、思いを馳せる、山でも同じ故。

 一方、人は広く世界を知ると思うが故に、その色さえ三つ四つに分ける。

 河原の色も、山の色も、大地の色の数え切れない数さえ知らず。

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