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脱皮

 茅のたわんだ葉の裏に、セミの抜け殻がついている。

 抜け殻というのは面白い、人は脱皮をしないから、尚面白いのかもしれない、空を飛べないものが、脱皮をすれば飛べる形になるのも面白い、セミに限らず、トンボにチョウと、あの小さな殻に押し込められたものが外へ出て、大きく豊かに広がって、空へ飛び立つ、これには胸のすくような思いがする。

 しかし、脱皮には危険も伴って、無防備なところを食われるというのはもちろんのこと、場所を間違え、時間を間違え、死んでしまうものも多くある。

 以前、オニヤンマの脱皮を見かけ、しかしそこは日差しの強い石の上、成虫の形になるはなったが、体は熱に耐えきれず、透けた胸の体液が、ぶくぶく泡立ち、死んでしまった、その柔らかな亡骸を、誰かの腹を満たすに残し。

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