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小説「笑う門には福来る」

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毎週日曜更新。日々退屈で憂鬱なアナタに心ほぐれるギャグをお届け!寝ても覚めてもふざけ倒す主人公(12)が巻き起こすドタバタ日常劇(全23話)です。
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2024年1月の記事一覧

笑う門には福来る 第18話 明日ありと思う心の仇桜

笑う門には福来る 第18話 明日ありと思う心の仇桜

 拓海は布団の中、横たわったまま思考に耽る。不登校になって、もう半年が経つ。時間が空けば、余計に教室に戻りづらくなる。今さら行ったところで、成績も人間関係も意味などない。最近ずっと無気力だ。ゲームをする気にもなれない。
 まるで砂漠をずっと歩いているようだ。水分も休める陰もなく、ただ果てしない道をフラフラと進んでいる。この干からびた心に、モチベーションという名の潤いが欲しい。
 重い心を引きずりベ

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笑う門には福来る 第17話 賢い人には友がない

笑う門には福来る 第17話 賢い人には友がない

 茂はランドセルを背負い、セミの声がする中、登校班に合流した。
「石川くん、黒くなったね! 炭火焼きされたの?」
「何で食われる前提なんだよ」
「こんなに焦げた肉は食いたくねえな」
 松本が呟く。
「こっちだって食われたかねえわ! そういうのは西岡に言えよ。あいつの方が美味そうな肉もってんだから」
「ほとんど脂肪だろ。やっすい肉」
「大将は美味しいよ! 絶対! 本人いないのに盛り上がる。そんなカリ

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笑う門には福来る 第16話 夏祭り

笑う門には福来る 第16話 夏祭り

 朝、松本が目を覚ますと茂からメッセージがきていた。
『今晩は何食べる?』
 質問の意図が読めず、アプリを開いて全文を表示する。
『もし予定ないなら、お祭りこない? 食べ物が腐るほどあるよ!』
 いや、言い方。
『母さんが屋台やるんだ。魔が差したらきて!』
 気が向いたらだろ、そこは。
 松本が返信すると、すぐに既読がついた。
『何の屋台?』
『たこ包み~こだわり濃いめのソース 青のりと鰹節をのせ

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笑う門には福来る 第15話 起死回生

笑う門には福来る 第15話 起死回生

 京太郎は夏休みにも関わらず、学校に来ていた。全教科赤点を取ったが故の補習である。睡魔に負けそうなところを、先生に叩き起こされプリントに目を向ける。
 だめだ。脳が勉強を拒否している。頬を叩き気合を入れて、頭をかきながらシャーペンを走らせた。昼には野球部の練習が待っているのだ。京太郎は部員ではないが、人数がギリギリのため助っ人として来て欲しいと言われている。県内ではそこそこの実力だが、一年生があま

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