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黒崎きつね
2023年12月31日 07:54
夕飯時、テレビで花火特集をしていた。「これいきたい!」声を上げた小春に母は眉を下げる。「んー、次いつ休み取れるかな」「じゃあ『でんしゃ』でにーちゃんたちといってもいい?」「いいけど、キョウか誠司が必ず一緒に行くこと!」 拓海はおそらく外に出ない。茂はまだ小学生だ。近所ならまだしも、遠出させるのは不安だった。「にいちゃん、あれいきたい!」「キョウと行って来い」「オレ、その日バイト」
2023年12月24日 08:50
梅雨に入った。湿度の高い、じめじめとした暑さが続く。少し外に出ただけで、じんわり汗をかいてしまう。クーラーの効いた家の中で、茂は大人しくしていた。外は雨風が強く、電線が揺れているのが窓越しに見える。 テレビでは台風情報が流れ、天気の隣に警報が表示されている。茂と小春は休み、高校生の長男と次男は自宅待機だ。 各部屋で好きなことをして過ごす兄たちに対し、茂はリビングに一人だった。いつもの笑顔はな
2023年12月17日 09:06
公園には水たまりが大量発生していた。ブランコや滑り台、茂みの蜘蛛の巣は水滴がついて煌めいている。子どもたちは傘を差し、自身の体とランドセルをかっぱで覆って集合していた。 茂はねこじゃらしを手に、登校班と合流する。「おはよう! いい天気だね!」「カエルにとってはな」 あとは坊主の石川を待つのみだ。その間、茂は傘を思い切り振ってひっくり返し、暇をつぶす。「壊れちゃうよ?」 結果、元に戻せ
2023年12月10日 09:02
茂は、次男と三男の共用部屋を訪ねていた。小春はピアノ教室へ、母はパートへ、長男はバイトへ、次男は部活の助っ人へ出かけている。 そっと扉を開けると、三男の拓海は布団の中だった。おもちゃのマイクを手に、茂はリポートを始める。「みなさんこんにちは! 藤原家随一のボケリスト、茂です! さあ始まりました、突撃兄ちゃんの部屋。当の本人は夢の中なので、目を覚ますまで物色していきたいと思います」 三男の寝
2023年12月3日 08:54
休日、京太郎は妹との約束を果たすため支度をしていた。誕生日の埋め合わせである。五月に誕生日を迎えて、ようやくバイトができるようになり、金を貯めたのだ。「早くしろよ。人混んで座れなくなるぞ?」「まって!」 女の準備は長い。まだ園児のくせに。「おまたせ!」 出てきたのは小春ではなく茂だった。京太郎は悟る。「お前も来るの?」「だめ?」 いつも何かとさせている上に小春のご機嫌とりが上手い