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武田薬品のお手本のような対応(小林化工や日医工との対比で)

武田薬品工業は19日までに、国内で製造販売するおたふく風邪(流行性耳下腺炎)向けワクチンの出荷を停止した。主力拠点である山口県内の工場で設備の不具合が見つかり、稼働を中止している。出荷再開は10月末になる見込みだ。武田は同ワクチンの国内供給の約半分を占めるとみられ、すでに小児科などの医療機関では接種の休止が相次いでいる。
- 2021年4月20日 日本経済新聞電子版 -

このニュースを読んだときに、おたふく風邪のワクチン集荷停止をして、第一三共バイオテックが同じワクチンを製造しているとはいえ、安定供給をリスクに晒している大問題だなと思いまいた。

一方で、昨今の小林化工や日医工における大問題との比較でいうと、武田薬品はしっかりとしているというか担当組織が正しいことをしっかりとしている真っ当な組織だという認識を強くしました。

小林化工や日医工の問題については以下のリンクをご参照下さい。

<小林化工の記事とプレスリリース>

調査委員会による調査報告(小林化工)

<日医工の記事とプレスリリース>

当社(日医工)に対する行政処分についてのプレスリリース

小林化工は、薬機法 75 条 1 項に基づいて、116日間の第一種医薬品製造販売業務の停止を命じるとともに、薬機法、GMP 省令2、GQP 省令3及び GVP 省令4等遵守のための対応をとることなどの業務改善を明示が求められています。

日医工は、3月5日から32日間の業務停止命令を受け、4月に入り製造を開始したが1週間と経たずに自主回収となっています。

前述のGMP、GQP、GVPを以下に簡単に説明しますが、このどれも医薬品製造販売者は肝に銘じて日々業務を進める必要があります。

GMP(Good Manufacturing Practice):製造管理・品質管理基準
GMPの正式名称は、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」です。
医薬品を製造する際に、定められた品質規格に適合することを確認し、製造過程も適切に管理し、品質の良い優れた医薬品を恒常的に製造することが求められています。
<重要な考え方として「GMP三原則」があります>
 1. 人為的な誤りを最小限にすること
 2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
 3. 高い品質を保証するシステムを設計すること
GQP(Good Quality Practice):製造販売品質保証基準
GQPの正式名称は、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令」です。
出荷判断基準や製造所の製造管理・品質管理の方法など品質管理業務を適正に実施するためのルール構築とその実施監督により出荷に責任を負い、品質管理体制を自己点検や教育訓練を通じ維持することが求められる製造販売業の許可要件。
GVP(Good Vigilance Practice):医薬品製造販売後安全管理基準
GVPの正式名称は、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」です。
医薬品等の品質、有効性及び安全性に関する事項、その他適正な使用のために必要な安全管理情報の収集と検討、その結果に基づく必要な安全確保措置の実施方法を定めたもので、製造販売業の許可要件。
<私の理解>
GMP:決められた方法で三原則に沿ってしっかりと製造する
 ↓
GQP:製造した製品の品質をしっかりと管理する
 ↓
GVP:販売した製品に関する情報を集め、安全対策をしっかりと実施する

さて、武田薬品の話に戻りますが、記事には以下のような記述があります。

出荷を停止したのはおたふく風邪向けワクチン「タケダ」。山口県光市内の工場で生産してきた。今回は3月にワクチンのもとになる原液を製造する設備のフィルターに異常が見つかった。その後、影響を精査品質への影響を否定できないことから、懸念される製品について破棄したという。

この問題はGMPとGQPがしっかりと機能しているからこそ、製造工程での異常をしっかりと認識(GMP)し、その異常が与える製品品質への影響を調査(GMP、GQP)し、品質基準不適合とし、該当製品の破棄をしています。

小林化工や日医工では機能していなかったGMPやGQPの仕事をしっかりと果たしていることになります。

そして記事ではこう続きます。

今後、原因となったフィルターを取り換えるが、ワクチンの製造には「6カ月ほどかかることもある」(同社)とされ、出荷再開は10月末になるという。「フィルターの管理手順などを見直して再発防止に努める」(同社)

お手本のような対応です。管理体制の見直し(GQP)をし、再発防止に努めることになります。問題発生前に比較すると今後同じようなことが起こる可能性は下がるだろうと感じる時点で、医薬品製造への信頼感を与えていると思うと、今後も安心して利用できるなと感じないではいられません。

コロナによって、製薬業界への関心がさらに高まり、ワクチンの安全性といったトピックも良く取り沙汰されています。製薬企業は様々な規制(GMPやGQPなど)の元で製造しており、医薬品を信じ使うための条件として多くの規制が存在しています。それがきちんと守られていなければ、安心して使えなくなるわけで、今後しっかりとしたルールの下で製造をして欲しいと願うばかりです。

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