見出し画像

製造移管には、時間とお金もそうだけど、学ぶ側のやる気・根気はもっと必要

昨年2020年10月にインドと南アフリカが、ワクチンの知財権の一時停止をWTO(世界貿易機関)に提案してから、色々と物議を読んでいるこのコロナワクチンの知財権の話題の新しい内容になります。

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスワクチンの供給拡大に向け、アフリカでの生産を目指している。取り組みの焦点は米モデルナ製ワクチンだが、交渉に進展は見られず、WHO高官はロイター通信に対し、実現には時間がかかるとの見通しを示した。


WHOは、コロナワクチンの製造に関する技術移転のための拠点を南アフリカに作って、アフリカでのワクチン製造を目指しています。

世界保健機関(WHO)は21日、新型コロナウイルスワクチンの技術移転を促す拠点を南アフリカにつくると発表した。先進国の製薬会社の協力を得て地元メーカーなどに知識を伝え、アフリカで9~12カ月以内にワクチンを製造することを目標とする。接種の地域格差是正につながることを期待している。

ご存知モデルナは、パンデミックの間はワクチンの特許を行使しないと言っているものの、この技術移管に関する交渉に目立った進展はないという。

穿った見方をする人もいるだろうが、モデルナ側は現在世界に向けての製造を日夜続けて居ると思うと、製造技術者を派遣するというのは難しいのが想像できます。

特許というよりも、製造上のノウハウがかなりのウェートを占めていると私は想像しています。それらをしっかりと技術移管するとなると、記事にもあるようにノウハウを含む製造技術に対しては有償と考えているというのは真っ当な考えであるものの、その条件(ロイヤリティなど)を積めるだけでもかなりの時間が掛かると想像できます。

米ファイザーとそのパートナーである独ビオンテックは7月、南アフリカのバイオバックと、アフリカ向けに年間1億回分のワクチンの生産を支援する契約を結んだ。ファイザー/ビオンテックのワクチンは、モデルナのそれと同様にmRNA技術を利用している。
しかし、ファイザー/ビオンテックとバイオバックの契約は「充填と仕上げ」、つまりワクチンをバイアルに入れ、密封して出荷する生産の最終段階に限られる。ファイザーとビオンテックが欧州の工場で行っている、mRNAワクチンの複雑な製造プロセスをカバーするものではない。

上記の記事にあるように、製造に関するステップは飛ばしてあり、充填と仕上げを現地化した対応が現実的なのかもしれないと感じました。

私が昔研究員をしていた日本製薬は、血漿分画製剤を主に製造している企業でしたが、製造の人と話すと色々なノウハウがあるのだなと思ったことがあります(詳しくは言えないので、分かりづらいですね。。。)。

製造指示書を見ただけでは、全体の流れは分かるとは思いますが、それだけでは分からないことだらけだと思います。何度も何度も製造工程を繰り返すことで、やっと理解できることが多いと私は身をもって知っています。

細胞治療薬を海外製薬企業から導入した際に、現地で技術移管を担当したことがあり、最初に製造指示書を読んで、色々と質問をして、私なりに理解をして、その上で日本で試してから現地入りした経験があります。現地では、指示書には掛かれていないノウハウがありました。例えば、「培養容器を傾ける」と書いてあっても、わかりませんよね?それ以上に、その傾ける「意味」というのを理解していないと、その行為がもたらす細胞へのインパクト(ダメージとか)も全く理解できないんです。

どの要因が製造工程のどのポイントにインパクトがあるのかといったものから、製造機器の運転方法まで一発で簡単にで覚えられる人なんていないと思うんですよね。

最後に、最初に書いたWTOにおける最新の記事をお伝えして終わりたいと思います。

新型コロナウイルスワクチンの特許の一時放棄の交渉が平行線をたどっている。世界貿易機関(WTO)が(2021年6月)8~9日に開催した会合では、先進国と途上国の意見の溝が改めて浮き彫りになった。ワクチンの供給拡大へ妥協点を見いだせなければ、パンデミック(世界的大流行)の収束は遠のく。

特許の一時放棄に関しては、米国は「異常な状況には異常な手段が必要」として理解を示す一方、欧州連合(EU)や英国、スイス、韓国は反対を表明しています。

WTOの意思決定は全164加盟国・地域の同意が必要になる。オコンジョイウェアラ事務局長は12月までに「現実的な解決策に到達することを望んでいる」と語る。11月下旬~12月上旬にかけてはWTOの最高意思決定の場である閣僚会議が開かれる。

この話は年内に何らかの方向性が決まる可能性はあるものの、先に書いたように実製造はそれほど容易いものではないため、生産体制の増強や輸出制限緩和などが当面の対策として挙がりそうだとしています。

今後どのような流れとなるか引き続き見ていきたいと思っています。

#コロナワクチン #特許 #知財権 #製造技術 #技術移転 #課題  

この記事を読んでいただいたみなさまへ 本当にありがとうございます! 感想とか教えて貰えると嬉しいです(^-^)