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ランナーの話:「ジミー」後編

2018年1月6日、ジミー、初トレイルレースに参加。マイナス14度の深い雪が残る森の中を4時間程度走り、その魅力を知る。

それまで、ボストン資格を取る為、踏み入れなかったウルトラやトレイルの世界。だが、流石のジミーも、少し、ロードマラソンだけに集中するのに疲れたのかもしれない。そこで、気分転換程度に参加したトレイルが、実は、走りのターニングポイントだったのではないかと推測する。

なぜなら、初トレイルレースの2ヶ月後開催のNYCハーフマラソンを、なんと90分切りで完走。ビッグなPRである。

続く4月、遂に、ジミーは、NJマラソンを3時間14分29秒で完走。念願の3時間15分切りを果たし、見事、ボストンマラソン資格をゲット!!

その上、1週間後の初ウルトラトレイル50マイルレースを12時間51分30秒で完走するという快挙を遂げ、停滞、いや、安定しすぎていた5年間の壁をぶち破った。

だが、翌年2019年4月、憧れのボストンマラソンは、豪雨。果敢に挑むが、ジミーらしく、初ボストンを、定番タイム3時間27分30秒で終了。チーン。

なんか、このまま、また3時間20分台の安定男に逆戻りか?と、思いきや、そこがジミー、更に、練習量と減量を自分に課し、毎年11月恒例のフィラデルフィアマラソンを3時間9分35秒で完走し、3時間10分切りを果たす。

その頃のジミーの容貌は、もう、減量前のボクサーから、修行僧と化していた。

ちなみに、ジミーには、”靴磨き”という相当地味な趣味がある。お酒をちびりちびりしながら、せっせとお気に入りの革靴やランニングシューズを磨くジミーを想像する。きっと、奴には強い自分の美学があって、それがあるから強いのであろう。

それを証明する様に、ジミーにとっては、世界を揺るがす新型コロナパンデミックも、屁の河童であった。

アメリカのランナーの間で、” #Run Alone(一人で走ろう)”ハッシュタグが流行したが、昔から一人で走るジミーには何の影響もなかった。それどころか、”時代が俺についてきたぜ。”ぐらいに感じていたかもしれない。

2020年、コロナ禍で、レースがことごとく中止になり、走るモチベーションを失うランナーが多い中、全く、変わらず練習を続けられるジミーは、小規模で開催するマラソンレースで、3時間8分52秒、3時間5分38秒、3時間4分4秒とPRを連発し続けた。ここでも、一気にサブスリーに行かず、地味にタイムを縮めるジミー、どこまでも期待を裏切らない。

そんなジミーが、最後にPRを決めたレース直後、こんな派手な宣言をしていた。

「サブスリーは最高の舞台、ボストンにとっておいたと前向きに考えよう。
今のところ4レース連続で自己ベスト更新中。次で絶対に決める。もう3時間一桁は要らない。」

そうか、ジミー、この秋にやるんだな。

それなら、黒リスも応援せねばならぬ。ネットでね。

だって、ボストンに応援に行っても見逃すからね。

(おわり)






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