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エッセイ:ぜんぶ

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愛犬の話、ニューヨークの話、ランニングの話などなど、その時々の気になったことをつらづらと書いています。
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2023年6月の記事一覧

私と保護犬くるみの物語:あたし、2歳になりました。

もう20年以上、犬と暮らしている。 くるみは、3匹目。 最初に飼ったロングヘアーチワワのミルキーは、仔犬の頃に出会い、13年以上一緒にいた。私の30代から40代前半の独身時代を支えてくれたワンコ。仕事も遊びもフル回転だった時代の私によくまぁ、文句も言わず(犬だから言えないけど・・・)ついてきてくれた。一番有り難かったのは、私のがん治療中、休職して1日のほとんどをアパートで過ごさないといけない時期、一緒に側にいてくれたこと。ミルキーのお陰で、世界から取り残されるような気分に全

原田マハの小説から学ぶアート

原田マハという小説家をご存知だろうか? 彼女の経歴が面白い。関西学院大学日本文学科を専攻後、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。その後、森ビル森美術館やニューヨーク近代美術館勤務を経て、フリーのキュレーター、カルチャーライターになり、アートを題材とした小説を何本も執筆している。 彼女の小説との出会いは、デビュー作「楽園のカンヴァス」だったと記憶している。ルソー名画を軸にしたアート・ミステリーで、世界を股にかけたストーリー展開にドキドキハラハラしながら、一気に読み切った記憶があ

死を意識する生き方:「日日是好日」を読んで。

読了後の格別な清涼感。 目を閉じて、お抹茶を飲み干し、ほっと一息ついた時、頬に軽い風を感じ、せせらぎの音が遠くに聞こえる。あのカサカサとした音はなんだろう?虫が葉の間を歩いている?いや、風が木の葉を揺らしている? 外の世界に想像を巡らせる。内に居るが、外の世界と繋がっている。 なんという安心感。 ああ、私はここにいて、ここに生きている。世界と共に生きている。それだけで満たされる。なんという素晴らしい日だろう。 そんな気持ちにさせられた一冊。 乳がん告知を受けた時、死という

ショートストーリー:猿は振り向かない

僕は本当に平凡な子供だった。 読書が趣味だったから、勉強は得意って程でもないけど、普通程度には出来た。でも、運動に関しては、相当、劣っていると感じていた。つまり、運動音痴って事だ。他の子に比べ、不器用というか、球技なんて、なんでみんなあんなに当たり前にボールを打てたり、キャッチしたり出来るのか、さっぱり分からなかったし、ドッチボールなんて、逃げ回る競技だと思っていたぐらいだ。ボール競技がダメだからと言って、脚が速いわけでもなく、運動会では万年ビリ。リレー選手に選ばれるなんて、