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新宿区長は、なぜ神宮外苑再開発に関する坂本龍一氏の手紙にコメントしたのか?

ー2023年4月4日付「神宮外苑を構成する緑の保全」と「坂本龍一氏のご逝去」についてに関してー

はじめに

 2023年4月4日付新宿区のニュースリリースを見て驚いた。そこにはこのような題が書かれていたからだ。

『吉住健一新宿区長が「神宮外苑を構成する緑の保全」及び「坂本龍一氏のご逝去」についてのコメントを発表』(注1)
 坂本龍一氏が新宿区に対し、神宮外苑再開発の関係で手紙を出したらしいことは東京都の小池都知事が2023年3月17日の都庁定例記者会見で東京新聞の三宅記者の質問に答える形で発言していたが、まさかそれが事実だったとは。(注2)
 坂本龍一氏が新宿区に対し、どのような手紙を出していたか。情報公開請求で確認してみよう。また新宿区が手紙を受けとったのはいつか。外部から文書を受けとったときは収受印が押されるはずだから、日時の特定は出来るはずである。
 そもそも、坂本龍一氏は都立新宿高校の出身であり、新宿区と何かと縁のある有名人ではあるが、新宿区名誉区民でもないのに(注3)どういう理由でコメントを出しているのか。そもそも、新宿区長が人が亡くなった際にコメントを出す基準があるのだろうか。
 坂本龍一氏のご逝去についてのコメントと同時に発表された『神宮外苑を構成する緑の保全について』は興味深い。「建国記念文庫周辺の神宮外苑の創建時からある移植可能な樹木について」と書いてあるが、新宿区は建国記念文庫の周りの樹木について神宮外苑の創建時からある樹木のデータを保有しているのか。また「当該地で移植が困難な場合には区有地に移植する」とある。当該地とは神宮外苑のことを指していると思うが、神宮外苑で移植が困難な場合には区有地に移植するという場合の区有地とは具体的にどこを想定しているのか。新宿区の公式WEBに載せた以上、庁内会議や検討資料の文書があってもおかしくないだろう。
 坂本龍一氏が新宿区長宛に出した手紙は個人情報に該当して非開示になる可能性もありそうだが、それも含めて情報公開請求をした。

情報公開の題名

 2023年4月6日に新宿区に対し、以下11点の情報公開請求をした。件名は以下の通り。
1)「生前の坂本龍一氏からのお手紙」とあるが、神宮外苑について坂本龍一氏が新宿区長にあてた手紙の日時内容が分かる文書
2)上記手紙を収受して、4月4日のコメントを出すまでの庁議及び決裁関係が分かる文書
3)「神宮外苑を構成する緑の保全について」を出すまでの庁議及び東京都、港区、渋谷区に対する手紙についての確認文書及び事業者との移植や樹木伐採に関する調整文書(含む原義)
4)東京都風致地区条例に基づく神宮外苑地区の樹木の伐採について、東京都からの意見照会及び新宿区の回答文書(含む原義)
5)上記4の新宿区の回答文を作成する際の庁内検討に関する文書
6-1)東京都風致地区のS甲区域(注3)の樹木の伐採及び移植に関する文書
6-2)上記6-2を受けての庁内検討内容が分かる文書
7)「建国記念文庫周辺の神宮外苑の創建時からある移植可能な樹木」とあるが、この樹木の場所、種類、本数がわかる文書
8)「当該地で移植が困難な場合」とあるが、移植困難の樹木の場所、種類、本数が分かる文書
9)「当該地で移植が困難な場合には、区有地に移植するなど」とあるが、建国記念文庫周辺の木の移植候補の新宿区有地の住所及び名称と移植候補先の新宿区有地を選定した際の議事内容と検討資料
10)新宿区長が人が逝去した際に新宿区長としてコメントを出す根拠や基準が分かる文書
11)人が逝去した際にコメントを出す根拠や基準がないなら、今回の坂本龍一氏に出した理由が分かる文書
 中身は大きく「坂本龍一氏のご逝去」に関する1)、2)、10)、11)と、「神宮外苑を構成する緑の保全」に関する3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)と、2つのグループに分けられる。

情報公開の結果

 情報公開請求した際は、件数が11件あり、坂本龍一氏が新宿区長に出した手紙は個人情報とのかねあいもあるから期間延長されるかと思ったが、4月20日付けで開示決定通知書が出された。公開されたものは「坂本龍一氏のご逝去」に関する1)と「神宮外苑を構成する緑の保全」に関する6-1)のみと少なかったが、それなりの成果はあった。

請求に係る公文書の名称と決定の内訳と非公開の理由が書かれた部分。1)~6)まで。
請求に係る公文書の名称と決定の内訳と非公開の理由が書かれた部分。7)~11)まで。

 下記が坂本龍一氏が新宿区長に出したものである。文面自体は各種マスコミで報道されているが、この現物を見て驚いた。
 

新宿区の情報公開では全文公開とされたが、連絡先の住所等が書かれた部分は被覆した

 それは左下に押された新宿区の収受印日付である。5.3.3とあることから新宿区は2023年3月3日に坂本龍一氏の手紙を受け取っている。しかしながら新宿区長がコメントを出したのは4月4日と約1ヶ月間の間隔がある。

 どうしてこれだけの時間が空いたのか。「神宮外苑の緑を構成する緑の保全」の資料の裏付け調査に時間がかかって発表したのが遅れたとは考えにくい。なぜなら裏付け資料と思われる文書はことごとく非開示だからである。
 7)の『「建国記念文庫周辺の神宮外苑の創建時からある移植可能な樹木」とあるが、この樹木の場所、種類、本数がわかる文書』という情報公開請求には『該当する樹木の場所、種類、本数がわかる文書は作成又は現時点で取得していないため、文書不存在』という説明である。
 8の『「当該地で移植が困難な場合」とあるが、移植困難の樹木の場所、種類、本数が分かる文書』という情報公開請求には『移植困難の樹木の場所、種類、本数が分かる文書は作成又は現時点で取得していないため、文書不存在』であり、9の『「当該地で移植が困難な場合には、区有地に移植するなど」とあるが、建国記念文庫周辺の木の移植候補の新宿区有地の住所および名称と移植候補先の新宿区有地を選定した際の議事内容と検討資料』という情報公開請求には『移植候補先についての文書は現時点で作成していないため、文書不存在』である。 

 そして、「新宿区長が人が逝去した際に新宿区長としてコメントを出す根拠や基準が分かる文書」という請求に対して、新宿区は「根拠や基準がないため、文書不存在」と回答し、「坂本龍一氏に出した理由が分かる文書」という請求に対しては、新宿区は「区長が直接書いたコメントを公開したため、文書不存在」である。「上記手紙を収受して、4月4日のコメントを出すまでの庁議及び決裁関係が分かる文書」という請求には「区長が直接書いたコメントを公開したため、文書不存在」ということは庁議を行った上で上記コメントを出したわけではないということなのだろう。
 ならば、坂本龍一氏の手紙を受けとってすぐに回答することはできたはずだと思うし、逆に言えば坂本龍一氏の逝去に対してコメントを出さない扱いにすることもできたと思われる。
 それなのに、なぜ、「神宮外苑を構成する緑の保全」という文書を出し、「坂本龍一氏のご逝去について」という文書を出したのだろうか。

最後に

 私のような無名な一市民が新宿区長に質問をしたところで回答が来るとは思えない。
 また、3月17日の東京都知事定例記者会見で小池都知事が発言したように、坂本龍一氏は文部科学省や国に坂本龍一氏に対しても神宮外苑再開発に対してどのような中身の手紙を出したのか。そして、事業者である明治神宮や独立行政法人JSC、伊藤忠商事や三井不動産に対しては神宮外苑再開発に関する手紙を出さなかったのか。
 「権力監視」をモットーとしているらしいマスコミ記者が私の代わりに質問なり、調査するなりしてほしい。

注1ー吉住健一新宿区長が「神宮外苑を構成する緑の保全」及び「坂本龍一氏のご逝去」についてのコメントを発表:新宿区 (shinjuku.lg.jp)

注2ー小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和5年3月17日)|東京都 (tokyo.lg.jp)

注3ー新宿区名誉区民は2023年2月23日の下記WEBによれば現在まで20人選ばれている。名誉区民:新宿区 (shinjuku.lg.jp)

注4ーS甲区域とは新国立競技場の周辺部の風致地区の区域を変更したことを指している。主に都立明治公園霞岳広場と都立明治公園四季の庭の部分。
下の図参照。

下は神宮第2球場周辺の風致地区の区域変更をする際に新宿区副区長に説明した際の資料

注4ー「神宮外苑を構成する緑の保全」に関する6-1)の文書は大量にある上に、新国立競技場建設に関するものなのでこの場には公開しない。

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