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【読書メモ】大人もぞっとする初版『グリム童話』(由良弥生)【#13】

グリム童話は有名なので知ってる話かなと思っていたら、収録されている9話中4話しか知りませんでした。収録されている9話とういのが

ヘンゼルとグレーテル
トゥルーデおばさん
長靴をはいた猫
わがままな子ども
灰かぶり(シンデレラ)
千匹皮
赤ずきん
ガチョウ番の娘
兄と妹

初版のグリム童話は残酷で暴力的なところはそのまま収録していて、性的なものは排除していたという解説がされているのですが、「トゥルーデおばさん」で出てくる主人公の少女は村の男とセックスしまくっているし、「長靴をはいた猫」の猫は艶やかに微笑む猫と表現されていて、牡猫と書いてあるものの小児性愛的なニュアンスが感じられるし、「赤ずきん」も初潮が来たとか下着姿にされたり(小児)性愛的な表現が出てくるし、「千匹皮」と「兄と妹」は完全な近親相関だし、全然排除されてなかったです。

むしろこれくらいの表現では性的とは考えられてなかった、つまり小児性愛や近親相関は近代のキリスト教的な価値観が広まるまでは、歴史的には広く行われていたようなので、許容されていたのかもしれません。ギリシャ神話は近親相関だらけですし、古代エジプトでは姉と弟が結婚するのはよく見られますし、ローマでも当たり前だったようですし、遊牧民では父親の配偶者や、兄弟の配偶者と、父や兄弟が死んだ後に結婚したという記述はよく見かけます。

何歳から小児性愛かというのも時代によってかなり変わります。日本でも戦国時代や江戸時代は13歳で成人、15、6で結婚するのは当たり前でした。中世ヨーロッパでは女性が結婚できる最低年齢は12歳だったようです。つまり、初潮が来るころ、僕の記憶が確かなら、身長が140cmを超えたあたりで初潮が来る女子が多いという調査があったと思います。現代の女の子は成長が早いため、その身長に達する年齢が低年齢化しているので小学3〜4年生、10歳程度で初潮が来る子が増えているようですが、昔は12〜13歳が平均だったのかもしれません。中世は処女性が重要視されていたので、初潮が来る前に結婚しておくという意味があって、平均としては14〜15歳くらいが平均だったから少し早めの13歳くらいで結婚していたのかもしれません。

残酷さに関しては、このまま残してくれていた方が良かったのに・・・という感じで採用されています。今の修正された童話では、人間のグロテスクな部分、冷酷な部分、悪い人が不幸になってせいせいした〜という部分が隠され過ぎていてつまらないです。教育的な部分が前面に出され過ぎていると、僕のような歪んだ子供は全然興味を持てずに、説教くさいな〜と冷めた感想しか持たなくなります。

知らなかったのですが、グリム童話が作られる100年ちょっとまえにフランスのシャルル・ペローという人が童話をまとめていたようです。シンデレラは、ペロー童話がディズニーのベースになっていて、いじめたお姉さんたちに結婚相手を探してあげるような優しいシンデレラです。一方で、グリム童話のシンデレラは、最後に「邪眼」を使っていじめたお姉さんたちがお互いに両目をくり抜かせるような残酷さを持っています。邪眼を持つ魔女として描かれていますが、僕としてはグリム童話の方が本当の人間に近いんじゃないかなと思ってしまいます。

おわり


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