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【読書メモ】ピカソになりきった男【#5】

天才贋作作家ギィ・リブの手記です。贋作者が自ら書いているという点だけでも貴重な内容と言えるでしょう。だけど、この本の凄さはそれだけではありません。

贋作というのは、名画を誰にも見分けられないくらい精巧に、忠実にコピーすることだと思っていました。しかし、ギィがしたのは、巨匠が生きていたら、いや、生きている時に描いたかもしれない新しい作品を想像することでした。タイトルの「ピカソになりきった男」というのはそういうことです。そして、恐ろしいことに、彼は「いまだに俺の贋作はオークションやギャラリーに並んでいる」と言っていることです。彼が指摘しない限り、彼の贋作は巨匠の作品の一つとして伝わっていくのです。

第一章 逮捕された日
その朝、俺はピカソだった。

この書き出しだけで、期待で心が震えました。コピーではなく、巨匠になりきる、憑依型作家の天才ギィの人生はとどういうものだったのか知りたくなった人は一読ください。

気に入ったところを1箇所だけ紹介します。

俺も最初の頃、試作を作っていたときはうまく、きれいに作ろうとしていた。完璧なテクニックを求め、しかしそこでは本質、つまり絵の魂を忘れていた。魂を絵に固定することこそ、いちばん難しい。(省略)絵に魂を与えるために、俺はまさにテクニックを忘れなければならなかった。資料を調べ、探求の段階で積み上げた知識もすべて、忘れなければならなかった。

終わり


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