黒い女

某英会話塾に小6まで、自転車を15分程走らせて通っていました。
毎週金曜日17時から18時。
季節は秋口、つるべ落としという言葉がぴったりなくらい、気が付くと日が暮れているような空模様でした。

いつも同じ時間、同じルートなのに、そういう季節の変わり目だったりすると、普段目につかないようなものが気になったりする時ってありますよね。

細い住宅街を通り抜けて家路に着くのですが、その日は何故か電柱1本1本が目に入り、いちいち気にしながら自転車を漕いでいました。

うわ!!!!!!!!!!!
突然のことに心臓が口から出そうでした。
電柱の地上3mくらいの高さにかなりでかい黒いゴミ袋が下がっており、異様な光景と雰囲気に一瞬でびびり倒しました。
そのゴミ袋がこの世のものでないということだけ認識出来た私は、出来る限りのスピードを出して残り半分の道を全力で抜けて行きました。

家に着いて冷静に考えても、何か障りがあるような場所に行った等、自分にアレが見えた理由は見当が付きませんでした。
住宅街ですけど田舎道の為、人通りはかなり少ないし、同じ時刻アレを見た人はいなさそうなので、見間違えということで落ち着こうとしました。

とにかく1日寝たらスッキリ頭カラッポになるだろうと思い、翌週の塾まで無心で過ごそうと心がけました。

それからは特に何も起こらず平和に過ごしていたと思うのですが、高校2年の同じような季節の頃の18時過ぎ、ハッキリ覚えていますが、その日は雨でした。
(高校まで通うのにも駅まで自転車を使っていたこと、塾より向こう側に駅があったので、ルートとしては帰り道は同じだったことを先に言っておきます。)
古くなった私の自転車はギコギコ音を立てながらも雨の中家に向かってました。(私はカッパ派)
住宅街を越えた所に野球少年たちのたむろするグラウンドがあるのですが、その日は雨なので誰もいないグラウンドでした。
何かに目線を引っ張られたように私はグラウンドの金網を横目に気にしながら自転車のスピードを落としてしまいました。

私から50mほど離れている1本の電柱に寄り添うように立つ、黒いレインコートのようなものを着た人が、こちらを見つめているのに気付きました。
咄嗟に目を合わせないように視線を逸らして前を見ようとしたのですが、しっかりその女がどういう表情をしているかは見てしまい、焦りながら家に帰りました。

自転車を止めて急いでマンションの2階にある自宅に入ろうとしましたが、駐輪場の隅に、階段の踊り場にと、その女が私の背後に憑いて来ているのが視界に入り、パニックになりながらも鞄に入れてある鍵を手元に用意しながら階段を駆け上がり、家に入ろうとしました。

ガチャッ!

「どうしたん」
母がたまたま先にドアを開けてくれたお陰か、女の気配は消えました。
私「いや、聞いて・・・今・・・」
母「やめて~どうせ怖い話やろ~、ママ今から病院行くねん」
この頃、親戚が入院していたので、お世話係を交代制で行っており、丁度その日は母が泊りになる日でした。

弟達も週末だったからか祖父母の家に預けられていて、自宅には私とペットの犬一匹の状態になるようでした。
恐怖から早口で母に、こんな女がいて、すぐそこまで追って来てたと伝えました。

「その女・・・」と母は根っからのイタコ風霊感女なので、私が見た笑っている顔も視えたようでした。

その日の夜は寝るのも怖いし誰かと電話で話すのも怖いので、犬と寄り添いながら朝を待ちました。

特に何も起こらず、もう大丈夫なんだと思ったのでお昼を作ろうと台所に入りましたが、母が帰って来て私にめちゃくちゃ怒ってきました。

あの話を聞いてから女の顔が頭に浮かんでたせいで夜中に顔が痛くなって病院だったことから検査させられる羽目になったと。

あぁ、私から母に乗り移ったんだ~ラッキーと娘ながら最低な喜び方を内心してこの恐怖体験は終わりを迎えました。




後日談ですが、母が昔ながらの霊感体質の友達に「こないだ黒奈がこんな女をグラウンドで見たんやけど、追っかけて来られたらしくて~」と話したら、「○○(母)ちゃん!顔痛いんやけど!やめて!こわい!」と言われたらしく、母は自分が顔が痛くなったのを思い出し、ほっとしたとのこと。

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