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入院手術の思い出【その2】

腰の骨を口の方へ移植するという大手術が終わり、しばらくは平穏な日々が続いていました。

やはり人間の体というのは少しでも欠けると不具合が出ます。
腰をぶつけたりすると激痛が走るのでしばらくは何をするにも慎重になっていました。

高校生になったころ、病院の先生から次回の手術について話をされました。
「今度は頭蓋骨を少し取って鼻すじの骨に移植する手術をします。」
「頭を切ることになるので、出血が多くなります。
なので、自己血を貯めておきましょう。」

お…おぅ…。

これはあのときの手術よりも大事になりそう、と直感でわかりました。

病院から少し離れた場所にある血液センターに通い、自己血を取り貯めていきました。
毎回200mlずつ、半年近く通って1Lくらい貯めた記憶があります。
その後、しばらくして入院する日が決まりました。

入院後、先生から手術の説明をしてもらいます。
「頭蓋骨は何層かの膜のようになっていて、今回取るのはこの辺りまでなので普段の生活に支障は出ません。」
ふむふむ、なるほど。
「そして、この骨を鼻筋のこの辺りにネジで固定します。」
へぇ〜。ネジで。
ちょっとした改造人間だなぁ。
「今回は頭を切るのでどうしても出血が多くなります。でも、自己血で補えるくらいだと思います。」
自己血1リットルもあるけど…?
1リットルの出血ってよっぽどでは?

説明聞かなきゃ良かった…と思いながら病室に戻りました。

さて、いよいよ手術の日。
前日眠れなかった私は術後どうなるのか不安になりながら朝を迎えました。
手術の前日の夕方からは何も食べられません。
お腹空いたなという感覚は正常なんだな、と思いながら手術の時間を待ちました。

「それでは手術室に行きますね〜」
看護師さんがやってきて、ベッドのまま運ばれます。
エレベーターに乗せられ手術室の前までやってきました。
例によって例の如く、不織布の手術着を着せられ、手術台へよいしょと乗せられます。

全身麻酔がきいていきます。
目の前が真っ暗に…。
このときの手術は半日以上かかったとあとから聞きました。

本当に一瞬だけ、自分を上から見下ろしているという不思議な感覚がありました。
次に目を閉じるとグッと何かに引っ張られるような感覚で自分の体の中に吸い込まれていき、そこで目が覚めました。

気付いたら病室のベッドの上で、両手両足に点滴が繋がっています。
目を開けると両親と先生、看護師さんにぐるりと周りを囲まれていました。

頭と顔に鈍い痛みを感じます。
あぁ、手術終わったのか…とぼんやりと考えていました。
その日からしばらくは全く動くことができず、頭と顔の違和感を感じながら毎日寝ているだけでした。

痛み止めが切れてくると猛烈な痛みが襲ってきます。
泣きながらナースコールを押し、また痛み止めを打ってもらう毎日でした。

何で私はこんな目にあっているんだろう?
考えるのは毎日それだけでした。

ずいぶん長い間、たくさんの点滴が繋がれていましたが、ひとつ、またひとつと外れていき、ようやく起き上がれるようになりました。
顔と頭の違和感は残りますが、痛みも少なくなってきました。

手術後はどうしても傷の周りは腫れているのですが、毎日消毒し、ガーゼを取り替えてとしているうちにおさまってきます。
いつの間にか腫れもひいて、鏡を見ると違う顔になっていました。

私がお世話になっていたのは形成外科、日本でも指折りの名医と呼ばれる先生でした。
「私があなたを綺麗にしてあげるからね。」
忘れられない一言です。

私は長崎から新潟に引っ越してくるとき、全ての自分の写真、卒業アルバムを実家に置いてきました。
過去の自分と今の自分の顔が違うからです。
子供に見られて「これだれ?」と聞かれたときに、手術の話をするのがイヤだな、とうっすら考えていました。

子供達がある程度大きくなってから、実は小さい頃からずっと入院手術を繰り返していたんだよ、と話しました。
病気の名前ももちろん伝えました。
長男はブラックジャックで見たと言い、大変だったんだね、と言ってくれました。

大きな手術もこれで一段落…かと思いきや、最後に待っていました。
記憶に残る大変な手術が。

長くなってしまったので、また次回に持ち越しです。





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