見出し画像

小笠原の予習・復習

こんにちは、くろもあさんです。
今回はアルコール抜きで書いてみるチャレンジをしましたが、結局、あたかも酩酊しきった人が書くようなようなテキストになりました!

さて、本題。

今月、およそ一年ぶりに、わたしは小笠原に帰ります。
帰ると言っても、わたしは小笠原で生まれたわけではありませんし、ソーシャルにはエンもユカリも一切ありません。

あるとすれば、一年前、小笠原を訪問した際に自分の大切ななにかを置いてきてしまったのが唯一の因縁です。
いま一度小笠原に帰ることに決めたのは、その大切ななにかを取り戻すためです。
その喪失はあまりに大きかったのでしょう。竹芝桟橋でおがさわら丸から降りたときの自分は、ただの抜け殻と化しておりましたね。

そんな経緯もあり、今度は小笠原の圧倒的な輝きに魅せられすぎないよう、行く前にしっかり予習・復習して耐性をつけておくことにしました。
今度こそ小笠原の美しい思い出を胸に抱きつつ、くだらない日常を楽しんで生きていける自分になれればいいな、なんて思いながら。

小笠原の海

小笠原の海はきれいです。絶海の孤島だけあって、変な隣人によってけがされることはないし、たとえそんな不心得者がいたとしても、大いなる海がそれを洗い流してしまうでしょう。

景観としての美しさでは、他の土地の海に軍配が上がることもあるかもしれません。決して派手さはありませんからね。
ただただ、素朴でピュアで……小笠原の海というのはそういうものです。
にごりきった自分の眼には、却ってそれがとてもまぶしく映りましたね。

小港海岸
南崎海岸と小富士
南島

手つかずの大自然

典型的な南国とはまた違った、小笠原特有の南国感があります。どことなくしっとりしているというか、和風?とでもいえばいいのか。

緯度は大きく違えど経度は本土と被るからか、ある意味で沖縄よりも日本の平均値に近い雰囲気を感じるのかもしれません。ゆえに自分の生活圏とは全く異なる土地のはずなのにどこか親近感を抱いてしまいます。

獰猛なケモノや毒を持ったヘビがいないのほほんとした場所というのも日本人の気性にあってるかもしれません。オガサワラノスリといういう猛禽もいますが、一番凶暴なのは本土から連れてこられた飼い猫が野生化したノネコなのでは、というくらい。

知らず知らずのうちに小笠原に過剰に入れ込んでしまう理由はそういった親しみやすさにもあるかもしれません。

ハートロック
マルハチ
傘山展望台

なんかご飯がおいしい

よくわかりませんが、飲食店のレベルが高いですね。離島とは思えない。ウミガメとか島寿司とか郷土料理的なものに気合いが入るのはわかるとして、日常的な食事までおいしいのが不思議。観光地であることにあぐらをかいて、殿様商売になろうものなのに。

腕の良い料理人が小笠原に魅せられて集まっている……なんて奇跡的なことがあるのでしょうか。あるいは、腕が良くないと経営が成り立たないくらい、島の人の外食に対する要求度が高いのでしょうか。もしくは、小笠原村への移住のハードルの高さが、招かれる料理人をふるいにかけてしまうのかもしれません。真相やいかに。

海遊さん
チャーリーブラウンさん
カメェェェッー

東京都

小笠原は絶海の孤島で本土からは遠く離れているにもかかわらず、信じられないくらいインフラがきれいに整備されています。圧倒的な大自然と圧倒的な人の力が調和している不思議。
日本全国がそうあるべきかもしれませんが、お金は無限ではありません。とくに疲弊していく地方にはムズカシイ。
でも、東京都ならお金はジャブジャブあります。普段はそんな大東京様の傲慢な態度に腹立たしく思うことさえありますが、小笠原にとってはこれ以上ない幸せな在り方なのかもしれません。

都道最南端
最南端のバス停
舗装がきれい

おが丸

東京都心でも小笠原村でもない、まったく別のムラがおがさわら丸船上に存在していました。片道24時間という長時間をかけて、ただ小笠原に行くという純粋な目的を共有する人々が集まっている不思議なコミュニティ。

乗客たちはみんな顔がキラキラしていて、もしかしたら自分の顔もそうだったのかもしれません。普段は死んだ魚の眼をしているはずの自分がね。まさかね。怖いから鏡は見ないけどね。
でも、一年に一度くらいは肯定された自分がいてもいいじゃない。

ムラの飲み屋っぽい雰囲気の展望ラウンジ
新しい船だけど、ちょいと古めかしさもある
朝にはバードウォッチング大会が開かれる
ありがとう
おがさわら丸とははじま丸

いってらっしゃい

たぶん、小笠原に心を囚われてしまった最大の要因が島ぐるみのお見送り。本土との間を結ぶおがさわら丸が通常期は一週間に一便しか来ないからというのもあるでしょう。本当に多くの島の人たちが……滞在中にお世話になった人たちが二見港に集結して見送ってくれます。

「いってらっしゃい」

という大きな声とともに。

いってらっしゃーい

港での見送りは離島においては規模の大小こそあれ、ありふれたものですね。
そんな中、小笠原の見送りが特別なのは、港からのみに留まらず、島じゅうの船がおがさわら丸に追いすがるように並走して見送りを続けるところ。

そして、去る人たちにむけて「小笠原を忘れるな」と言わんばかりに、島の人や小笠原に二航海以上島に滞在する旅人たちが船上から海に飛び込んでゆきます。その光景はあまりにも衝撃的で記憶に深く刻まれます。

おが丸を追いかけてくる船の群れ

飛び込みの儀式がおわった船から一隻ずつ速度を落とし、おがさわら丸から見えない位置に後退していきます。

屋根の上で逆立ちしている人もいたりして

そして、最後に残った海上保安庁のボートが他船の安全を見届けたのち、笑顔を残して父島へUターン。

カッコイイ海上保安官のみなさん

飛び込みは無軌道でウェーイなお祭り野郎たちの暴発というわけではなく、万全を期した島ぐるみのお見送りの儀式であることを思い知らされました。胸にこみ上げるものがあるじゃないですか。

美しい海や大自然の素晴らしさもそうですが、小笠原がわたしの心をつなぎとめて離さない最大の要因は、小笠原には小笠原が大好きな人々がいて、旅人たちを迎えてくれるからなんでしょうね。

というわけで

予習・復習ということで、去年の小笠原旅行について記憶を頼りに書いてみましたが、まだ小笠原に行ってもいないのに、なんだか泣きそうになってきましたね。
どうやら、今年も抜け殻状態で竹芝桟橋に降り立つ可能性が高いのかもしれません。

万が一、わたしのように心を囚われてしまうリスクはあれど、圧倒的に素晴らしい場所である小笠原。まだ行ったことがない方もぜひ渡航を検討してみてください。

渡航記念の御船印

最後に

小笠原にハマるとおサイフが軽くなるのは万人に共通する宿命。のめりこみ注意です。
重症の方は、小笠原協会の賛助会員になると渡航の負担が軽くなるかもしれませんよ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?