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本の紹介「地球温暖化の予測は正しいか?」   江守 正多著

 この本は、「気象のことはほとんど知らないけど、どうして地球が温暖化するの?、将来の気温上昇が2℃とか3℃とか言ってるけど、どうやってそんな事を計算してるの?」と思っている人向けの比較的読み易い本だと思います。

 著者は、気候モデルの開発者、つまり、二酸化炭素濃度の上昇により地球の気温がどうなるのかを正しくシミュレーションするための気候モデルを研究開発している人です。開発の当事者ではありますが、現状で正しくできていることとまだ曖昧なことが客観的に評価されていると思います。また、地球温暖化の専門家が書いた本であり、正しい知識が得られると思います。

 空気中の二酸化炭素濃度の増加により温室効果で気温が上がるとすると、地球はどうなるのか?気温が上昇すると空気中に含まれる水蒸気の量が増えます。水蒸気は温室効果ガスの一つで二酸化炭素よりも寄与度が大きいガスです。ここで、水蒸気濃度の増加により温室効果がさらに顕著になりさらに気温が上がる(正のフィードバック)のか、逆に、水蒸気濃度の増加により雲の発生が増加し、雲が太陽光を反射することにより気温が下がる(地球への太陽光の入射エネルギーが減少する)、つまり元に戻る方に働く(負のフィードバック)のか、というようなことをコンピュータでシミュレーションするわけです。

 気候モデルは、大気の動き、温室効果を含めた地球のエネルギー収支等の他、海面の気温、海流の状態、氷河や雪面の状態・面積、地表面の状態(森林、草地、砂漠、都市等)、雲の3次元構造等々、地球の気温に影響を与える多くの要因を考慮して精度を向上させる開発が行われています。

 この気候モデルは世界各国で開発されています。開発されたモデルは過去のデータによる合わせ込みを行い、モデルのチューニング(各種方程式の係数調整、気象のミクロ現象の取り込み方の調整等)を行い精度の向上を図ります。現状、世界で約20の気候モデルが開発されており、二酸化炭素濃度と地球気温の関係をシミュレーションしています。

 二酸化炭素濃度が2倍になった時の気温の上昇量を「気候感度」といいます。この気候感度を世界各国の気候モデルでシミュレーションした結果、「2.5℃〜4.5℃となる可能性が高い」、という結論になったようです(IPCC第4次評価報告書)。ここで、「可能性が高い」とは「66%以上の確率」という意味で使っています。つまり、この範囲よりも低い値や高い値になる可能性もある、ということです。ちなみに、IPCCの第5次評価報告書では、「気候感度が1.5℃〜4.5℃となる可能性が非常に高い」と、範囲が広くなりました(その代わり確率は90%以上となりました)。 IPCC=気候変動に関わる政府間パネル

 本書の結論としては「二酸化炭素濃度の増加により気温が上昇することは確からしいが、気候感度が何℃になるかは?である。」ということになると思います。

 本書の初版は2008年11月とやや古く、その後も気候モデルの開発は継続されていますが開発の内容としては大きな変更は無いと思われます。私の書評よりも本書の方が分かりやすく書かれていると思いますので、地球温暖化に関心のある方は本書を読まれる事をお勧めします。

【目次】

第一章 地球温暖化はどんな問題か?

第二章 未来をどうやって予測するのか?

第三章 コンピュータの中の地球

第四章 なにが予測されているのか?

第五章 地球温暖化の予測は「正しい」か?

第六章 地球温暖化予測の今後