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地球温暖化とIPCC第六次評価報告書の話/一般者向け入門解説(2)

※写真のチョウはコミスジです。北海道から九州まで広く分布しよく見られるチョウです。

一般の人にも理解できるように地球温暖化とIPCC第六次評価報告書の話を分かりやすく解説します。今回はIPCCとは何か?何をする組織か?について解説します。


2.IPCCとは

先週(2021年8月10日頃)のニュースでIPCCで新たにまとめられた第六次評価報告書の内容が紹介されていました(覚えているでしょうか?)。ここでIPCCとは何でしょうか?IPはIntergovernmental Panel、つまり「政府間パネル」、CCはClimate Change、つまり「気候変動」のことで、IPCCとは「気候変動に関する政府間パネル」と訳されています。

IPCCでは各国の科学者・専門家が気候変動に関する最新の科学的知見(既出の論文)を取りまとめて報告書を作成しています(科学者、専門家は各国政府が推薦)。事務局はスイスのジュネーブにあります。人為起源の気候変動に強い危機感を持った人たちが中心となって設立されました(当時から、現在でも人為起源の気候変動に否定的な科学者のグループもあります)。

IPCCは、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画と世界気象機関により設立された組織。

1988年の設立当時は、二酸化炭素よりもフロン類(洗浄剤やエアコン等に使用)が温室効果ガス問題の主役だったと思います。フロン類は二酸化炭素の数百倍から一万倍程度の高い温暖化係数だったからです。フロン類は、1997年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP3)の京都議定書において排出削減対象ガスに指定され、日本国内ではフロン類の放出禁止や適正管理等の法令(フロン排出抑制法、家電リサイクル法等)により放出抑制が行われています。

報告書はこれまでに5回作成されており(下記)、今年2021年の8月9日に第六次評価報告書の一部(第一作業部会報告書)が発表されました。尚、第六次評価報告書の統合報告書は2022年9月の発表が予定されています。

第一次評価報告書 1990年
第二次評価報告書 1995年
第三次評価報告書 2001年
第四次評価報告書 2007年
第五次評価報告書 2014年

また、IPCCの組織は3つの作業部会(下記)と各国の温室効果ガスの排出量と吸収量の数値計画に関するタスクフォースから構成されています。

第一作業部会(WG1):科学的根拠
第二作業部会(WG2):影響、適応、脆弱性
第三作業部会:(WG3):緩和策

第一作業部会の「科学的根拠」とは気候システム及び気候の変化について評価を行うこと。科学的データをもとに人の活動に伴って気候システムや気温・気候がどのように、どの程度変化しているかを評価する部会です。

第二作業部会の「影響、適応、脆弱性」とは生態系、社会・経済等の各分野における影響及び適応策についての評価を行うこと。これは、気候変化によりどのような影響、リスクがあり、それらのリスクにどのように対応すべきかを評価する部会です。例えば、大雨の頻度が高まるというリスクに対して治水改善をするとか、猛暑日増加リスクに対してヒートアイランド緩和策の実施や屋外労働者を熱ストレスから守る新しい働き方を策定する等です。

第三作業部会の「緩和策」とは気候変化に対する対策(緩和策)についての評価を行うこと。これは、二酸化炭素排出量の低減割合毎に今後の気温・気候変化がどうなるかをシミュレーションすることです。

3つの作業部会の報告書は、それぞれ「政策決定者向け要約(SPM)」と専門的で詳細な情報が記載されている「技術要約(TS)」があります。

(付)IPCCは報告書を作成する組織です。各国はIPCCの報告書内容を基に国連気候変動枠組条約における締約国会議(COP)で討議を行い各国の目標を決めます。有名な京都議定書は1997年に京都で開催されたCOP3での決定事項です。

次回は第一次から第六次までの報告書内容の変遷について解説予定です。早くIPCCの評価報告書の概要を知りたい方は下記の記事をご覧ください。前回、第五次評価報告書(2014年)のまとめですが。

以上