もでりんぐ!! ラスト

 あれから、半年以上の月日が過ぎ去った。
 クラップス星人の征服を食い止めた俺達モデリング部は、地球内外から英雄のような扱いを受けていた。それは月日が経つにつれて落ち着いてきたけども、他の宇宙人の侵略行為はなかなか待ってくれることはなく、結構な頻度で出動させられるハメになっていた。
 そんな忙しい日々を送っている中で、俺は高校二年生へと進級した。
 今日はそんな二年生となった新学期。特Sクラスは一クラスしかないので、特にクラス替えで人が入れ替わりすることは無く、見たことのあるメンツが一同を介していた。しかし、俺は教室をよく見回して、ある違和感に気づいてしまった。
「……席が一つ多い?」
 一年のときに三十五席だったのが、三十六席あるのだ。
「おはよー! みこちゃん! 大ニュースだよ!」
 渉がいつも通りのハイテンションでやって来た。
「大ニュースってなんだよ」
「特Sクラスに転入生が入るってさ」
「転入生? こんな時期に……、ってまさか!」
「その、まさかですよ」
 ふと聞きなれた声が聞こえて、俺が前を向くとそこには、
 茶山陣学園の制服に身を包んだ、夏水が立っていた。
「夏水、お前……」
「えへへ。ちょっと時間はかかってしまいましたが、帰ってきちゃいました」
 夏水は少し照れくさそうに笑った。
「おかえり、夏水」
「ただいま、三琴君」
 俺達は久々の再会に抱き合って喜んだ。
「あと、もう一人、特別ゲストがいるんですけど、呼んでもいいですか?」
 夏水はニヤニヤしながら俺に訊ねる。
「特別ゲスト?」
「きっと、驚きますよ。出てきていいですよ」
 夏水の合図と共に入り口からひょっこり顔を覗かせたのは、
 TRICYに飲み込まれたはずの菜音だった。
「えっ、何で菜音がっ……」
「最初はTRICYに飲み込まれたとばかり思っていたのですが、あの性悪女に限って易々と犠牲になるわけが無いって僕は思ったんですよ。なので、三琴君と別れた翌日にアジト跡へ行ってみて探索したら、なんと隠し部屋を見つけましてねー。其処で事が収まるまで篭城するつもりだったみたいですよ。なので、僕が形式上捕虜として捕まえましたー」
「人を昆虫みたいな扱いしないでもらえる?」
 夏水の悪意たっぷりの言葉を菜音が即座にツッコミを入れた。
「暫く処遇をどうするか揉めたんですけども、クラップス星人のメインとなっていた母体のTRICYが機能停止した今、特に害を及ぼすことは無いだろうと、観察処分になって、僕が帰ってくるついでに茶山陣学園に戻ってきたというわけです」
「別に戻ってこなくても良かったんだけど、ココじゃないとダメって言われたから」
 菜音はツンとした態度を一度取ったのち、
「でも、あの時はごめん……なさい。今では反省しているの。許してくれる?」
 少ししゅんとした顔で菜音は俺を見た。
「もう、侵略者ってわけじゃないんだろ? 終わったことだし、許す。これからも、よろしくな」
 俺はそう言って菜音に向けて手を差し出した。
「ありがとう。三琴君」
 菜音は俺の手を握って、お互いに仲直りの握手をしたのだった。
「んー、いい話だねぇ」
「いい話のところ悪いけど、邪魔するよ!」
 渉が感激している中、いきなり特Sクラスに亀山先生が殴りこんできた。
「よぉ、おかえり夏水。早速だけど例の新作クレポンをコチラに渡して貰おうか」
「え、え? 何のことですかねぇ」
 夏水は白々しく目線を逸らした。
「お前が研究室から勝手に持ち出したっていうのはとっくに割れてるんだよ。さ、渡しなさい」
 先生が手を出すと、夏水は、
「嫌ですー」
 と言いながら俺の手首を掴んで走り出した。
「え、何で俺まで逃げないといけないんだ」
「三琴君には共犯者になってもらいますよ。なんせ、世界を救った同士なのですから」
「それは、関係ないだろ!!」
 そんなやりとりをやりながら、俺達は先生から懸命に逃げた。
 これから、さらに楽しいモデリングライフが始まるような予感がした。
【もでりんぐ!! これにて大団円!!】


#創作大賞2023

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