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突然に

学校の廊下の突き当たりを曲がると君がいた。私と目が合う。僕は君の目をみつめたまま動けずにいた。君もこちらをみて止まっている。

君と出会ったのは1年前。君と私とで共通の友達がいて、いつもその3人で過ごしていた。休み時間に話す程度の関係だった私と君。でもいつの間にか、君に恋をしていた。それに気づいたのは今年になってからのこと。今は君とは違うクラスで共通の友達だった子は引越しで遠くへ言ってしまい、もうしばらく話していない。君と長いこと話していないと何だか気持ちが落ち着かなくなってきて、そうか、これが恋なんだ、と気づいた。また君と話がしたい。君は今何を思っているのだろう。
こんなことを考えながら廊下を歩き、突き当たりを曲がると君がいた。私は君の目をみつめたまま動けずにいた。あまりに突然君が現れるものだから、咄嗟に言葉も出ず、君を見つめていた。私があまりにじっと見つめたせいだろうか、君もこちらをみつめる。
何秒がたっただろう。何か言わねばと思い私はおはよう、と言う。君は目を細めて言う。「もう昼だよ。」
このなんでもなさがどうしようもなく私には懐かしかった。

文芸部企画【1文指定物語】
お題「君の目をみつめたまま動けずにいた」
私は目には不思議な力があると思います。目配せ、という言葉や、目は口ほどに物を言う、と言うように、目には何かを伝える力があるのではないでしょうか。
本作品の中でも「私」が「君」を見つめたことで、「君」も不意に立ち止まっています。
そんな事を考えさせてくれる、いいお題でした。

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