【書評】有名経済学者直伝!世界に羽ばたける「稼ぐ経済学」
●本の概要
今回紹介するのは「そのビジネス課題、最新の経済学で”すでに解決“しています。 」という本である。本書は、「エコノミクスデザイン」という会社(Twitter: @EconDesignInc)に経営陣として参画している方々が分担して執筆している。この会社は、経済学の知見をビジネス課題に用いようと志す日本の経済学者などによって結成され、ビジネス課題に経済学の知見を用いて、企業の利益拡大を試みる「稼ぐ経済学」を日本国内で浸透していこうと努めている。「稼ぐ経済学」はすでに、「経済学の絶対的な中心地」ともいえるアメリカ合衆国では幅広く実践されている。「エコノミクスデザイン」に参画する経済学者の中には、アメリカで経済学の博士号を取得した方もおり、アメリカの事例を見てきたからこそ、「日本でも広めたい」という強い信念が生まれ、会社ならびに、本書が世に出ることになった。
本書の執筆に関わっている経済学者の中には、慶應義塾大学の坂井豊貴教授(Twitter: @toyotaka_sakai)や、大阪大学の安田洋祐教授(Twitter: @yagena)といったマスメディアに多く登壇する方もいる。ゆえに、執筆者欄を見て、「ああ、あの方も書いているのか。」と感じる方も少なくないであろう。
本書は「稼ぐ経済学」にはどのような類型が存在して、それらの類型がどのように各企業によって実践されているかが鮮やかに述べられている。メルカリや、Facebook・インスタグラム、アップルといった「誰もが知っている会社」のビジネスモデルにどのように「稼ぐ経済学」が組み込まれているかについての記述は、読者が「稼ぐ経済学」を理解するのに、大きな助力となるであろう。
本書は「稼ぐ経済学」の本であり、経済学(※ミクロ経済学が中心)の理論の実践例についての内容は当然存在する。しかし、統計データによるマーケティングの実証分析を専門とする慶應義塾大学の星野崇宏教授(公式HP)や、財務会計を専門とする静岡県立大学の上野雄史教授(公式HP)のように、厳密に見れば、商学部・経営学部の範疇に位置する内容も存在する。ゆえに、ガチガチの経済学専攻の学生・出身者だけでなく、幅広い読者層に訴求できる本となっている。分担によるオムニバス形式となっているので、1ページ目から順次読むのではなく、気になっている章から適宜読みつぶしていく読み方も良いであろう。
●本を読むべきターゲット
本書は、専門書ではなく、幅広い読者層を想定して書かれたビジネス書である。ゆえに、専門書とは違って、ガチガチに前提知識を予習しなくても、先程述べたように、「誰もが知っている会社」での「稼ぐ経済学」の実践例にかかれている構図や数字をさらっていくだけで十分楽しめるであろう。
ただし、経済学に関する知識があれば、本書の内容はより鮮明に頭に刻まれるであろう。特に、大学1年の必修程度のミクロ経済学の知識があれば、安田洋祐教授が書いた第1章や、坂井豊貴教授による第2・6章については、「ミクロ経済学には、必修で学んだものを発展させた知見があって、その知見が"稼ぐ経済学"として応用されている」という認識で、より深く読み進められるであろう。
加えて、実際に会社員や経営者として、商品・サービスの販促業務(営業・マーケティング等)に携わっている人にとっては、国際大学の山口真一准教授(公式HP)がSNSによる宣伝や、無料の試供品、多価格帯での提供の重要性について書いた第3章や、星野教授が統計データを用いた顧客関係管理(CRM)について書いた第4章、さらには「唯一の”ビジネスサイド”」として「エコノミクスデザイン」の代表取締役として会社を切り盛りしている今井誠代表取締役(Twitter: @imai_auctionlab)の終章あたりが、かなり参考になるであろう。
また、販促業務ではなく、経理・法務といったバックオフィスに携わっている人にも、財務三表のような会計情報に、環境や社会的信頼といった情報を加味して、投資判断を行っていくESG投資について、上野教授が書いた第5章が参考になるであろう。そこから、「"稼ぐ経済学"として、他所ではこんな実践が行われているのか。」と見ていくのも良いであろう。
●類書
本書には、東証プライム上場企業「北の達人」の木下勝寿社長(Twitter: @kinoppirx78)が自らの経営手法を直々に紹介して、ベストセラーとなった「売上最小化、利益最大化の法則」と内容が似ている箇所が存在している。具体的には、安田教授が第1章で書いた需要分析による価格設定、星野教授が第4章で書いたLTV(顧客生涯価値)という数値を用いた顧客関係管理についてである。
しかし、純粋な"ビジネスサイド"である木下社長の著作とは違って、「そのビジネス課題、最新の経済学で”すでに解決“しています。 」は大学で研究をしていた”アカデミックサイド”によって書かれている。ゆえに、すでに「売上最小化、利益最大化の法則」を読んでいる人にとっては、木下社長が提唱していた「売上最小化・利益最大化」やLTVによる顧客関係管理といった概念を"アカデミックサイド"がどのように捉えているかを「そのビジネス課題、最新の経済学で”すでに解決“しています。 」で見ることが出来る。
また、読んだことがない人は、「そのビジネス課題、最新の経済学で”すでに解決“しています。 」を読んだ後に、「売上最小化、利益最大化の法則」を読めば、「純粋な"ビジネスサイド"による生きた経営の実体験」を掴み取ることが出来るであろう。
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