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VOCADOL 48

FILE.007 時の館殺人事件(9)

▼MAP007-7 時田坂マンションB棟

(エントランス)

【kokone】
「バリアフリーになっているから、車椅子でも簡単に移動できそうだよね」

「ほら。ここにはエレベーターもあるし」

【メルリ】
「あ……あたしにも真相が見えてきたような気がするわ」

【杏音】
「どういうこと? あたしはまだ全然わからないんだけど」

(エレベーター)

【kokone】
「エレベーターとエスカレーターって、どっちがどっちだったかわからなくなっちゃうことがあるよね」

【メルリ】
「……そう?」

【杏音】
「エレベーターとインベーダーも、ときどきどっちがどっちだったかわからなくなるよねえ」

【メルリ】
「それはさすがに、あなただけだと思うけど……」

(309号室)

【kokone】
「明かりがついていたのは、3階の一番奥にある部屋だったよね」
「309号室……ここだ」

【杏音】
「あれ? この部屋のドアも鍵がかかってない」

「しかも、部屋の中にはたくさんのアンティーク時計が飾ってあるよ! え? え? どういうこと?」

【kokone】
「思ったとおり」

【メルリ】
「なるほど。やっぱり、そういうことなのね」

【杏音】
「え? え? どういうこと?」

▼MAP007-8 時田邸

(玄関ロビー)

【星霜】
「今が何時だかわかっているの? 非常識にも程があるわ」

【kokone】
「すみません、時田さん。でも、妹さんを殺した犯人がようやくわかったので、一刻も早くお伝えしようと思いまして」

【星霜】
「あら、そうなの? それはご苦労さま」

「じゃあ早速、聞かせてもらおうかしら」

【kokone】
「犯人は時田さん――あなたです」

【星霜】
「……たいして笑えないジョークね」

【kokone】
「残念ながら冗談ではありません」

【星霜】
「一体どういうことなのか、私にわかるように説明してもらえる?」

【kokone】
「時計のゼンマイを巻くからと一人きりになった午後9時から9時半の30分間に、妹さんを殺害したんですね?」

【星霜】
「本気でいっているの? 脚の悪い私が、この屋敷と駐車場を30分で往復することは不可能だわ」

【kokone】
「いいえ。それができるんです。今、車椅子に乗った杏音が駐車場にいますので、実験してみましょうか?」

「もしもし、杏音。準備はいい?」

【杏音】
『いつでもどうぞ』

【kokone】
「じゃあ、行くよ。用意……スタートっ!」

【星霜】
「バカバカしくてつき合ってられないわ。茶番は終わり。私は忙しいの」

【メルリ】
「それほど時間はとらせません。杏音なら10分以内に到着するでしょうから」

【星霜】
「10分? 車椅子に乗ったままで? 不可能だわ」

【kokone】
「いいえ。階段でもなく、迂回路でもない――第3のルートを使えば、時田さんにも犯行は可能だったはずです」

【星霜】
「……第3のルート? どこにそんな道があるというの?」

【kokone】
「あそこです」

※建ち並ぶ左右5棟のマンションに光の道が浮かび上がる。

図2-1

図2-2

【kokone】
「エレベーターを乗り継ぎ、自分の部屋を通過していけば、このお屋敷と駐車場の往復なんて、簡単にできてしまいます」

「すみません。先ほど、勝手に確認させてもらいました。明かりのついている部屋にはすべて、アンティーク時計が飾ってありました。どれも時田さんのお部屋なんですよね?」

【杏音】
「ゴールイン!」

【メルリ】
「7分20秒。思ったよりも早かったわね」

つづく

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