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下手の横スキー35

第35回 2002年夏NZ旅行記(3)

 9月4日(水)
 ニュージーランド・スキーツアー5日目。
 今朝も午前6時起きで待機してたってゆーのに、天候不良でヘリスキーは中止(涙)。チャンスはあと2日しかないんだぞ。本当に体験できるのか?(どきどき)
 そんなわけで今日は涙を拭き拭き、カドローナスキー場へ。クイーンズタウンから車で90分。サザンレイクスキーエリアの中で、もっとも安定した雪質と積雪量を誇るスキー場。昨日のトレブルコーン同様、そのスケールは半端じゃありません。
 ゲレンデを見上げてびっくり。斜面のいたるところに、巨大な岩がそびえ立ってるじゃないですか。ちょ、ちょっと待ったあああっ! あそこを滑るんですか? 斜度だってハンパじゃありません。よけることができなければ、大怪我を負うこと間違いなし。
 日本では考えられないシチュエーションに、最初はかなりびびりまくってましたけど、雪質に助けられたこともあって、恐怖は次第に快感へと変化。うーん、満足。綺麗なお姉さんに「この変態が!」と罵られるうちに、だんだんと気持ちよくなってくるのと同じ原理ですな(たぶん違う)。
 夜は食事をしながら、マオリショーを見学。顔に入れ墨をしたニュージーランドの先住民族マオリが、様々な踊りや芸を披露。「うおおおお。一緒に踊りてえええ」と思っていたら、ちゃんとそのような場も設けてくださって、舞台の上でマオリダンスを楽しみました。昨日に引き続き、踊りまくり。れっつだんす。うわお♪
 さて。予定どおりのスケジュールであれば、明日は豪華賞品が当たるスラロームレースが開催されるはず。「仮装をして滑ると、特別賞がもらえるよ」との情報をキャッチした我々は、近所のおもちゃ屋とコンビニを駆け回って、仮装グッズを買いあさる。露出狂の僕はもちろん、素っ裸に網タイツ。スキー場で素っ裸になったことは、さすがにこれまで一度もなかったので、明日がかなり楽しみ。ふふ。特別賞はいただきだいっ!

 9月5日(木) 
 ニュージーランド・スキーツアー6日目。
 思いっきり晴れました。そんなわけで、待望のヘリスキー。
 ……いや、ちょっと待て。
 確かに待ち望んではいたけどさ、本日ヘリスキー決行されるということは、本来予定されていたスラロームレースはどうなるわけ?
 ガイドのお兄ちゃんに尋ねると、あっさりとひとこと。
「中止です」
 があああああ(号泣)。昨日、夜更かしして飾りつけた網タイツはどうなるのおおおお? バニーちゃんセットはどうなるのおおおおお?
 ニュージーランドの空に雄叫びをあげ続けるうちに、あっさりとヘリポートへ到着。
「今日は暖かいので、いつ雪崩が起きてもおかしくありませんねえ」
 いきなり、ツアーガイドに脅しをかけられる。このあたりの経緯は、「第9回 雪崩の恐怖」に詳しく書きましたので、そちらをどうぞ。
 サザンレイクのヘリスキーは、3ラン、5ラン、7ランから選択することができるそーな。せっかくニュージーランドまで来たんだから、たくさん滑らなきゃもったいないと、僕と義兄は7ランを選択。ヘリコプターに乗って山頂へ。
「うわあ。景色がいいなあ。すごいすごい」
 窓の外を覗きながら大はしゃぎ。
「ををっ! あそこなんてすごいよ。断崖絶壁だあ。あんなところから落ちたら、ひとたまりもないだろうなあ」
 などと話していると、なぜかヘリコプターはその断崖絶壁に向かって飛んでいく。なるほど。近くまで寄って、スリルを味わわせてくれるのだな。
 と思っていたら、崖の上にヘリコプター着陸。
 え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛。
「も、もしかして、ここを滑るんですか?」
「イエッサー!」
 親指を立てて、にっこりと笑う操縦士。僕らを崖の上に残したまま、ヘリコプターは無情にも飛び去っていきました。
 あたりは突風が吹き荒れてます。気を抜くと、途端に崖のほうへと吹き飛ばされそうになるし。ちなみに、崖までの距離はわずか数メートル。
「うええええん。怖いよお。おがあぢゃああん」
 泣き叫びながらスキー板を履いていると、
「ぺらぺーらぺらぺーら(あなたたちは、7ランを選択したのだから、超ベテランスキーヤーですね。容赦なく進んでいきますから、そのつもりで)。れっつごー!」
 ガリガリのアイスバーンをガンガンと飛ばすツアーガイド。
「あ、待って。置いてかないで。あ、あ、あ。あまりの強風で乳首が飛んでった。おーい、まっちくびー!」
 パニックに陥りながら叫んだ駄洒落も、ニュージーランドの上空に空しく響き渡るだけ。
 果たして、生きて帰れるのか?
 僕は必死で、ツアーガイドのあとを追いかけたのでありました。
 7回も滑れるのか? とおっかなびっくりで始めたヘリスキーでしたが、これがメチャクチャ気持ちよく、最後には「7回じゃ物足りない。10回でも20回でも滑りたいよお」と思うまでに。
 残念ながらふかふかのパウダースノーには巡り合えませんでしたが、ツアーガイドさんの説明によると、「最高のスプリングスノー」だったとか。滑る場所によって、全然雪質が違うのも面白く、こんなにも楽しく滑ったのは、ホント生まれて初めてのことでした。雪の上で食べた昼ご飯も美味しかったし、ああ、また行きたいなあ。
 ヘリスキーを満喫したあとは、「キーウィ&バードライフパーク」へ。
 ニュージーランドへ来たっていうのに、本物のキーウィを全然見かけないじゃん! と怒ってたら、「見かけるわけねーだろ」と笑われてしまいました。キーウィって夜行性なんですね。そんなわけで、こちらのバードパークでも、主役のキーウィはやっぱり暗室の中。光や物音に敏感らしいので、忍び足でガラスケースに近づいて、じっとキーウィを観察。暗闇の中、息をひそめてガラスにへばりついていると、なんだか妙な気分になってきますな。三林ケメ子に「息が荒い」と注意されました。反省。
 夜は近所のバーへ。
 軽いカクテルが飲みたいというケメ子の要望に、「よっしゃ、任せておけ」と胸を叩き、「シリアルキラー」という名前のカクテルを注文する。どー考えてみても、軽い飲み物とは思えぬネーミングですが、だって、どんなカクテルなのか知りたかったんだもおん。ケメ子、ごめん。
 登場したカクテルは、化学の実験にでも登場しそうな不気味なダークブルー。しかも、花瓶のようなでっかいガラス瓶に入っとりました。試しにひと口飲んでみると、超激甘。しかも、めちゃくちゃアルコール度高し。入っているシロップのせいか、次第にガラス瓶がネチャネチャと糸を引き始める始末。飲めるか、こんなもん!
 酒の強いツアー仲間にそのカクテルを譲って、我々は早々に退散。
 翌日になってから聞いたんですけど、僕らが押しつけた「シリアルキラー」を、残ったメンバーで飲んでいたら、「へい、ないすがーい!」と5人組の男が現れて、「俺たちと楽しい夜を過ごそうぜ」と危うくナンパされそうになったらしい。慌ててその場を逃げたそうだけど、もしかして、そのトラブルも「シリアルキラー」が運んできたのか?
 限りなく危険な酒、シリアルキラー。もう二度と頼むもんかいっ! と固く心に誓った私なのでありました。べべん。
(次回に続く)

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