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下手の横スキー33

第33回 2002年夏NZ旅行記(1)

 旅行会社から、「ニュージーランド・スキーツアー」の案内パンフレットが届きました。
 大雪原の写真を見て、にっこりうっとりぽわわわ~ん。
 いいなあ。出かけたいなあ。
 真夏のスキーなんて、サイコーの贅沢。今すぐにでも申し込みたいところですが、残念ながら先立つものが……。うーん、人生そうそう甘くはありません。今年の七夕は、短冊に「もっと売れろ! ってゆーか買え!」と切実な願いを書いて笹の葉につるしたんですけど、その思いはいつになったら、天まで届いてくれるんでしょーか?

 そんなわけで今回は、3年前(2002年)に出かけたニュージーランド・スキーツアーの模様を、当時の日記から抜粋してお届けしたいと思います。な、なにいってんの? 手抜きなんかじゃないわよっ!(焦りまくり)

 8月31日(土)
 本日より、待望のニュージーランド・スキーツアー。
 「8月中には書き上げます」と約束していた仕事を、飛行機離陸の4時間前に終わらせ、それから慌ただしく出発の準備。
 押し入れの奥から、かびくさい冬服を引っ張り出してきたはいいが、「うわあああ、虫に食われて穴が空いてるうううう」と、慌てて近所のユニクロまで走る始末。店内商品が秋物に替わってて、ホントよかったあ。
 集合時間ギリギリに名古屋空港へ到着。午後6時20分発の飛行機で、オークランドへと飛び立つ。
 今回の同行者は、先日2人目の子供が産まれたばかりの義兄A藤さん、「東海一のお嬢」との異名を持ち、世界中のスキー場を駆け巡っているF井さん、「最近、お尻の穴を犯される夢ばかり見るんですう」と笑顔で語る毎度おなじみ三林ケメ子──異常もとい以上3名。全員、同じスキークラブに所属している強者ばかりなり。
 しかも今回のツアーは、有名デモンストレーター2名と共にニュージーランドのパウダースノーを楽しむ――題して「渡辺一樹&伊東秀人と滑るエンジョイサザンレイク9日間」。これはかなり、エキサイティングな旅行になりそうです。
 まずは機内で夕食。
 外国人のフライトアテンダントが、「ぺらぺーらぺらぺーら(解読不明)」と英語で語りかけてくる。
「あ、あうあう……」
 いきなりしどろもどろ。
「ぺらぺーらドリンク?」
 懸命に耳を傾けて、ようやく理解。どうやら、なにか飲みたいものはないか、と尋ねているらしい。紅茶がほしかったので、
「ティ、ティー……」
 と、どもりながら答えると、
「ジャパニーズティー?」
 いきなり、急須を取り出すアテンダント。
 い、いや、そうじゃなくて。
 紅茶といいたいのだが、英語で紅茶をなんといえばいいのかわからない。
「ジャパニーズティー?」
「…………」
「ジャパニーズティー?」
 顔を近づけ、僕を問いつめるアテンダント。
「イ、イエース!」
 結局、ほしくもない日本茶を飲む羽目に。
 ずずずっ。しぶっ。
 飛行機の中からこれでは、先が思いやられます。
 夕食といえば、スプーン、ナイフ、フォークと共に、長さ15センチほどのプラスチック製の棒がついてきました。
 これはもしかすると、西洋人の使う爪楊枝? さすが西洋人。なんでもかんでもビッグだなあ、と感心することしきり。歯茎にやさしいように、先端が丸くなってるぞ。よーし、これから9日間、僕もニュージーランドに滞在するんだから、西洋の生活様式に慣れておかなくっちゃと、早速口の中に突っ込んでみる。
 でかすぎて、歯の隙間には入らないが、歯茎をマッサージしていると、なんだかとってもいい気持ち。をを、こりゃいいぞ。お土産に1本もらっとくか、と思っていたら、近くに座っていた外国人が、その西洋式爪楊枝で珈琲をかき混ぜ始めました。
 爪楊枝じゃなくて、マドラーかよっ!
 マッサージのやりすぎで、歯茎から血をだらだらと流しつつ、僕は太平洋の上空を南に向かって進んでいくのでありました。

 9月1日(日)
 ニュージーランド・スキーツアー2日目。
 2日目といっても、まだ飛行機の中だけど。
 ニュージーランド時間の午前7時に朝食。日本とは時差が3時間あるから、ホントはまだ午前4時。当然ながら、寝ぼけまなこの僕。
「朝食には、洋食と日本食をご用意いたしております」
 と、アナウンスが入る。日本食もあるとはありがたい。ニュージーランドに着いたら、洋食ばかりの生活になるだろうから、最後の日本食を味わわなくっちゃ。
「洋食はオムレツ、日本食は焼きそばとなっております」
 朝の4時から、焼きそばなんか食えるかよっ!
 ……そんなわけで、朝食はオムレツ。ああ、今度はちゃんと紅茶を飲むことができました。なるほど、イングリッシュティーっていえばよかったのね。
 11時間のフライトを終え、午前8時半にオークランドへ到着。うわーい、初めての南半球だあ。はしゃぎながら、飛行機を降りると、いきなり不思議な木像が、我々を出迎える。入国手続きもそっちのけで、とりあえず記念撮影。
 『もののけ姫』に登場したこだまみたいで、ちょっとプリティー。あとから判明したのだが、この木像――ニュージーランド先住民のマオリ族が敬っている神様で、ティキと呼ばれているんだそーな。をを。そういえば、サンリオランドにもいたっけ。いや、あれはキティだ。
 呑気に記念写真なんて撮ってるもんだから、入国手続きが遅れて、あやうく次の飛行機に乗り遅れそうになる我々。「急げ、急げ!」と走っていると、
「ああああっ! あれを見て!」
 突然、立ち止まるケメ子。
「なに? どうした?」
「あの外人さん、安岡力也にそっくり! 記念写真、撮っていこうよ!」
 騒ぐ彼女の首に縄をかけ、なんとかクライストチャーチ行きの飛行機に飛び乗ったのでした。
 ニュージーランドにはたどり着いたものの、まだまだ先は長い。午前11時にクライストチャーチへ到着。目的地クイーンズタウンへ向かう飛行機は午後2時に出発なので、その間、クライストチャーチの街を見学することに。
 長くて細い螺旋階段をひたすら昇って、大聖堂の展望台へ。眼下に広がるクライストチャーチの街を、感動しながら眺めていると、隣にいたケメ子がひとこと。
「うわあ。なんだか大垣みたい」(注・大垣=岐阜県大垣市のこと。我が家から車で三十分ほどの場所にある超ローカルな土地)
 ムードぶち壊しぢゃ(怒)。
 まあ確かに、走ってる車は日本車ばっかりだし、いたるところに日本人がいるし、すぐ近くにはOKショップがあって大橋巨泉が笑ってるし、あんまり外国へ来ているような雰囲気ではなかったんだけどね。
 大聖堂を見学したあとは、アートセンターのフリーマーケットを楽しむ。ニュージーランドでの初めてのお買い物は、たっぷりの具をナンで包んだ中東風サンドイッチ「ファラフィル」。ものすごいボリュームで、1個食べたら、もうお腹いっぱいでした。
 午後2時半過ぎにクライストチャーチを飛び立ち、午後3時半――ついに、目的地クイーンズタウンへたどり着く。そこから20分ほどバスに揺られて、ガーデンズパークロイヤルホテルへ。名古屋空港を出発してから約24時間の旅路――ひじょーに疲れましたけど、これから始まるニュージーランド・スキーライフに胸をふくらませます。
 とそのとき、ケメ子がひとこと。
「あ、あの山、多度山みたい」(注・多度山=我が家からもっとも近い場所にそびえ立つ山。標高403メートル)
 だから、ムードをぶち壊すなってば。
 渡辺一樹デモ 、伊東秀人デモ を迎え、ツアー参加者26名と共にウェルカムディナー&オリエンテーション。
 ウェイトレスがうっかり手を滑らせ、いきなり頭からビールをかぶるA藤さん。なんて手厚い歓迎なんだろう(感動)。
 みんなに真っ先に名前をおぼえてもらっただけでなく、美人の外国人おねーちゃんに身体を拭いてもらったりまでして、さすが義兄、しょっぱなからオイシすぎます。
 そんなこんなで、ニュージーランド初日の夜は過ぎていくのでありました。べべん。(次回に続く)

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