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CASE40 暴れ牛殺人事件《問題編》

★作者のモノローグ★
 釈迦如来に知恵を貸し、無事にイエス・キリストを誕生させた銭山警部と黒田刑事。二人はその功績を称えられ、希望どおり下界へ戻ってくることができたのでありました。めでたし。めでたし。……あらすじだけ語ると、どんな話だか全然わかりませんね。いや、本編を読んだところで、その印象はまったく変わらないと思いますが。とゆーわけで本編が始まります。

 下界へ戻ってくるなり、いつもと変わらないマンネリパターンで、黒田刑事が勢いよく飛び込んできた。
「警部、大変です! 小学校教諭の細井軽夫(ほそい・かるお)さんが生徒たちの前で殺害されました!」
「きたきたきたあっ! ひさしぶりの事件だからワクワクするわぁ。さあ黒田ちゃん、詳しく説明して。あたしの非凡な推理力で、すぐに犯人を見つけ出してあげるから」
 銭山警部は声を弾ませながら、スキップを繰り返す。
「いえ。犯人はもう捕まりました。牛です
「牛ぃ?」
「どうやら、今日は遠足だったみたいですね。牧場へやって来たところで、悪戯好きの児童が気の荒い牛にちょっかいを出したらしく……暴れ牛から子供たちを守ろうとして、細井教諭は踏みつけられてしまったとのことです」
「あら、お気の毒。でも、それって単なる事故でしょ? あたしの出る幕なんて、どこにもないじゃない」
「いえ。問題はここからなんです。興奮した牛は踏み潰した細井教諭をさらに後ろ脚で蹴り飛ばしたそうで。細身で体重も軽い教諭は、そのままどこか遠くへ吹っ飛んでしまい、いまだ行方がわかっておりません」
「あららら、それは大変。周囲の捜索はしたんでしょ?」
「はい。事故現場から半径一キロ以内をくまなく調べあげましたが、いまだ細井教諭の遺体は見つかっていません」
「牛に蹴られたときのエネルギーが莫大で、空間を捻じ曲げてしまった可能性も否定できないわね。もっと遠くへ飛ばされちゃったのかも」
「なるほど」
 黒田刑事が頷く。牛に蹴られて何十キロも移動するなんて常識では考えられないことだが、さすがにこれだけわけのわからぬ事件に遭遇し続けていると、そういうこともあるのかと簡単に納得してしまうらしい。
「身元不明の遺体が見つかったという報告はないの?」
「三件あります。一体はシンデレラ城のてっぺん。一体は富士の樹海。一体は甲子園球場のど真ん中で発見されたそうです」
「なんだ」
 黒田刑事の言葉を聞いて、銭山警部は小さく肩をすくめた。
「だったら、牛に踏み潰された哀れな先生の遺体がどれかなんて明らかじゃない」

《ぜにーちゃんからの挑戦状》
 細井軽夫の遺体はどこへ飛ばされちゃったのかしら。あなたも推理してみてね。うふ。

※解決編はこちら

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