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下手の横スキー89

第89回 小説・雪だるまの怪(後編)

 ふっふっふっ。
 不気味に笑っております。
 ひっひっひっ。
 ニヤニヤが止まりません。
 なにがそんなに嬉しいかって?
 そりゃあーた、決まってるじゃないですか。
 来年春までラニーニャ現象が続くかもよべいべー、と気象庁からの発表があったんです!
 ラニーニャとはなんぞや?
 太平洋赤道域で海面水温が平年より低くなる現象であります。
 つまりはエルニーニョの逆。逆といっても、ニョーニルエではありません。わかってるって。
 尿煮るぇ!
 ……あまりの嬉しさに、異常なハイテンションが続いておりますな。
 とにもかくにもラニーニャ現象。
 これが喜ばずにいられるかっつーの。
 ラニーニャ万歳!
 少年マジシャン山上兄弟に感謝。
 いや、てじなーにゃとは関係ないから。
 富士山初冠雪。
 旭川で平年より10日早い初雪。
 スキー馬鹿には嬉しい情報が次々と舞い込んできます。
 今週末にはいよいよスノータウン「イエティ」もオープンですぜ。
 ああ。今から冬が待ちきれません。

 ……さて。
 いきなり本題。
 先週に引き続き、姪っ子が書いたスキーミステリをご紹介いたします。
 ドキドキの後編は、このあとすぐ。
 まずは前編のあらすじから。

《前編のあらすじ》
 S高原へスキーにやって来た真弥、李実、麻凜。
 最近、S高原では、夜中に怪しい男が出没したり、雪崩に巻き込まれて女性が行方不明になったりと、不吉な出来事が続けざまに起こっている。
 夕食時、真弥のふたいとこである香織から、不思議な話を聞く3人。
 なんと、雪だるまがゲレンデを歩き回っているというのだ!
 その雪だるまの正体は果たして?

 ちなみに、前回のラストで、

 ま、とにかく完結編を刮目して待て!
「ねえ、かつもく~ん」(花沢さん風に)

 と書いたところ、
「花沢さんはカツオ君のことを『磯野君』と呼びます。間違えないでください」
 と、お叱りのメールをいただきました。しゅん。
 やっぱり、

 ま、とにかく完結編を割礼して待て!
 痛い、痛い。でも大人(ぽっ)。

 のほうがよかったかなあ。
 ……すみません。
 それでは完結編です。
 S高原で起こった数々の怪事件は、実は1本の糸で繋がっていた!?
 うーん。僕は絶対、意味ありげに登場した盆栽が怪しいと思うんだけどなあ。

 食事は、バイキング形式だった。
 食べ物をとってきて、食べ始めると、李実が言った。
「ねえねえ、香織ちゃん、いろんなことがおこっているっていうけどさあ、その謎をあばこうとか考えたことないの?」
「そりゃあ、あたしだって、早く謎が解明したらいいのになあって思うよ。あたしも、毎日スキーしてるんだしさ。やっぱ、ちょっとこわいじゃん? 雪だるまが歩いたりすると」
「うん。でもさあ、変な人がいるのと、なだれがおきたのと、雪だるまが歩くっていう三件ってさ、なんか、全部関連してるんじゃないの?」
「うん、そうだよね、たぶん。麻凜、かしこ~!」
 李実がほめると、麻凜はてれた。
「いやあ、そんなことないよ」
 すると、いきなり、真弥が立ち上がった。
「あのさっ!」
 みんなが、真弥のほうへ視線をむける。
「あのさあ、歩く雪だるまのことだけど、本当は、人間だったのかもネ」
 すると、香織も手をあげる。
「うん! あたしも、そうじゃないかって、思ってましたー!」
「歩く雪だるまは、本当に、雪だるまが歩いてたんじゃないってこと?」
 と言うのは、麻凜。
「じゃあ、なんで、雪だるまが歩いているように、見えたの?」
 と、李実。
「たぶん、太めの男の人の上に、ちょっとだけ雪がつもったんだと思う」
 真弥がサラダを食べながら言う。
「でもさあ、なんで、その男の人は、自分の上につもった雪をはらおうとしなかったの?」
「たぶん、はらったと思うよ。だけど、かたくてとれなかったんじゃない?」
「ふうん。そこまでは分かった。じゃあ、なんで、そんな夜に、男の人は外にいたの?」
「これはあたしの想像なんだけど……」
 と、前置きをしながら説明したのは、香織。
「その男の人は、ナイタースキーをやっていたんじゃないのかな?」
 すると、真弥が反対する。
「いや、それは、ないと思う。雪だるまみたいに見えるぐらい、つもるんだから、そうとうなふぶきだったと思うよ。だから、そんなふぶきだったら、ナイタースキーをやっていても、ふつう、中止するよね?」
「うんうん」
 と、三人がうなずく。
「あ、わかった」
 と、李実。
「その人、たぶん、最近おこったなだれで、行方不明になった女の人をさがしていたんじゃない?」
「なんで、夜なんかに?」
「昼は、スキーをやっている人たちがたくさんいるじゃない。危ないでしょ、そんなところで、うろちょろしていたら」
 李実は平然と答える。
「なるほど。そういうことだったのね」
 香織がぽつんとつぶやく。
「今度、いっしょにさがしてあげてって、お父さんに言ってみようかな……?」
「じゃあさ、変な人がいるのも、その男の人だったわけね?」
「うん。外にでて、数分だったら、まだスキーウエアにつもらないでしょ? だから、変な人に見えたんじゃない?」
「なるほど」
 こうして、歩く雪だるま事件(?)は、あっさり解決された。めでたしめでたし。

 ……。
 …………。
 ……………………えーと。
 結局、盆栽は伏線じゃなかったんですか?

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