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CASE28 鬼嫁殺人事件《解決編》

 とそのとき、部屋のドアが開き、美しい女性が姿を現した。
「あなた。帰りが遅いから心配したじゃない」
 今にも泣き出しそうな表情で、前科有益にしがみつく。
「おまえ。どうしてここがわかったんだ?」
「あたしが呼んだの。有益ちゃんの憂鬱そうな顔を見て、どうせこんなことないじゃないだろうかと思ったから」
 銭山警部が答える。
「有益ちゃんの奥さん。あたし、喉が渇いちゃった。みんなに冷たいお茶を出してもらえないかしら?」
「ええ、どうぞ」
 彼女は頷くと、いきなりシャツをめくり上げ、お腹のドアを引き開けた。
「え? えええええええ?」
 彼女のお腹には小型の冷蔵庫が埋め込まれていた。そこからペットボトルを取り出し、唖然とする黒田刑事たちの目の前に一本ずつ置いていく。
「有益ちゃんに刺されて瀕死の状態だった奥さんは、もはやサイボーグ手術を施さなければ生き延びることができなくなっていたの。だから、彼女のたっての希望で、全身に電化製品を埋め込むことにしたのよ。これなら苦手な家事にも積極的に取り組むことができるでしょ?」
「まさか……サイボーグになっていただなんて……」
 信じられないといった様相で、前科有益が呟く。
「気にしちゃダメ。そんなのはささいなことじゃない」
 銭山警部はにっこりと笑って、彼にいった。
「かかあ天下が、かかあ電化になっただけだもの」

                                 THE END

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