見出し画像

CASE33 オリンピック殺人事件《問題編》

※このお話は2014年2月に発表されたものです。そのことを踏まえた上でお楽しみください。

 自宅で素っ裸になりながら、テレビのオリンピック中継を楽しんでいた銭山警部のもとへ、黒田刑事が息せき切って駆け込んできた。
「警部、大変、大変です! うわあっ! またしても変態っ! どうして全裸でテレビなんて見てるんですか?」
「あらヤだ、黒田ちゃん。日本を代表するアスリートたちが必死で戦っているんだもの。あたしたちが全身全霊を込めて、生まれたまんまの姿で応援するのは、当然のことなんじゃなくて?」
 銭山警部は股間のイチモツをぶるんぶるん振り回しながら、「ほらいけ、そこよ! トリプルアクセルぅぅぅっ!」とわけのわからぬ声援を繰り返している。
「あの……オリンピック観戦はあとにしてもらえませんか?」
「なにかあったの?」
「事件です。駅の公衆トイレで、若い男性が撲殺されました」
「あら、物騒な世の中ねえ。物盗りの犯行かしら?」
「いえ。財布や貴重品が抜き取られた形跡はありませんでした」
「ってことは怨恨?」
「それもないでしょう。被害者は誰からも慕われる聖人だったそうで、みんな口をそろえて『彼に恨みを持つ人間なんていなかった』と証言していますから」
「うーん。だとすると、変質者の犯行かしら? 最近、変質者が多くて困っちゃうのよねえ。まったく……世も末だわ。」
 腰に手を当て、イチモツをさらに高速で振り回しながら、銭山警部がいう。変質者はおまえだ、と喉まで出かかった言葉を、黒田刑事はぐっと呑み込んだ。
「犯人に心当たりはないの?」
「事件発生直後、『これで日本代表は俺にキマリだ!』と叫び、公衆トイレから飛び出してきた覆面姿の男性を、何人かの人が目撃しています」
「日本代表? ……もしかして、被害者は日本有数のアスリート選手だったのかしら? 日本代表の座を奪うため、犯行に及んだとか?」
「いえ。殺された男は普通のサラリーマンでした」
 黒田刑事は眉をひそめ、さらに続けた。
「実は最近、このような動機のまるでわからない通り魔的殺人事件が多発していまして。ここ数日の間に、似たような事件があとふたつ起きているんです」
「あらら。それは大変。同一犯の仕業かしらね。それらの事件になにか共通点はあるの?」
「被害者が全員男性だということ以外は、とくになにも。最初の被害者は二十代の学生で、スポーツジムの更衣室で着替えているところをナイフでひと突きされて死亡しました。もう一人は五十半ばの中年で、スーパー銭湯からの帰り道に、いきなり絞め殺されています」
公衆トイレ……更衣室……銭湯……なるほど、解決の糸口が見えてきたわ」
「え? まさか、もう真相がわかったんですか?」
「もしかしてその三人、あたしと違ってナニの大きさが極端に小さかったんじゃない?」
 自分の立派なイチモツを自慢げに回しながら、銭山警部が尋ねる。
「はい。警部のおっしゃるとおり、全員かなりお粗末なナニの持ち主でしたが……え? そのことが事件となにか関係あるんですか?」
「モチのロン。大ありよ」
 そう答える間も、銭山警部のイチモツはぐるんぐるんと回転し続けていた。

《ぜにーちゃんからの挑戦状》
 三人の男はなぜ殺されてしまったのかしら? あなたも推理してみてね。うふ。

※解決編はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?