VOCADOL 42
FILE.007 時の館殺人事件(3)
▼MAP007-2 時田邸周辺
(駐車場)
【kokone】
「……あれ? 駐車場に立ち入り禁止のテープが張ってあるよ。どうしたんだろう?」
【メイ】
「ああ、皆様。お待ちしておりました」
【kokone】
「なにかあったんですか?」
【メイ】
「実は……時田様の妹――《トキタ》の新社長がここでお亡くなりになられまして……」
【メルリ】
「どういうこと? 詳しく聞かせてもらえる?」
【メイ】
「今朝早く、近くに住む男性が犬の散歩の途中で見つけたそうです」
「後頭部を殴られて即死だったとか。遺体のそばには血のついた鉄パイプが落ちていた、と警察のかたは話しておられました」
【kokone】
「そういえば新社長、昨日のパーティーに顔を出さなかったもんね。殺されたのはいつ?」
【メイ】
「遺体を調べた結果、昨夜の午後9時から10時の間に殺されたことは確実のようです」
【kokone】
「だけど、パーティーが終わったあと、大勢の人がこの前を通って帰ったはずだけど……」
【メイ】
「遺体は車の陰に隠れていたので、朝まで見つからなかったみたいですね」
「こんなことになって、時田様はとても心を痛めておられます。一刻も早く事件を解決し、新社長を襲った犯人を見つけたい、と思われていることでしょう」
「そんなときにタイミングよく、名探偵アイドルと呼ばれている皆様からお電話をいただきました」
「きっと、皆様なら事件を解決してくださると思い、私の一存でお招きした次第です」
「どうか、新社長を襲った犯人を見つけ出してください」
【杏音】
「わかりました。名探偵杏音ちゃんにお任せあれ」
「報酬はチョコデニッシュ1年分でお願いします」
【kokone】
「ちょ、ちょっと、杏音……」
(車)
【杏音】
「うわあ。かっこいいスポーツカーだあ」
【メイ】
「新社長の愛車です。新社長はこの車の陰に倒れているところを、発見されました」
【メルリ】
「車の外に、大量の吸殻が落ちているわね」
【メイ】
「おそらく新社長が吸われたのだと思います。ヘビースモーカーで、かたときも煙草を手放すことがありませんでしたから」
【kokone】
「車内がひどく荒らされてるよ。ダッシュボードの中身は外に飛び出してるし、ゴミ箱も横倒しになってるし」
【メイ】
「殺された新社長が所持していたのは携帯電話とシガレットケースだけ」
「財布も、普段はめているはずの腕時計も見つかりませんでした」
【メルリ】
「つまり……物盗りの犯行?」
【メイ】
「警察はそう判断したみたいです」
【杏音】
「あれ? だけど、運転席と助手席の間のセンターコンソールに、高そうな腕時計が置いたままになってるよ」
「この時計は盗んでいかなかったんだね」
【kokone】
(センターコンソールに残された腕時計……なにかひっかかるなあ)
SE.電話の音
【メイ】「時田様がぜひお会いしたいそうです。お屋敷までご足労いただけますでしょうか?」
(時田坂)
【杏音】
「25……26……27……」
【kokone】
「元社長の大豪邸に……またお邪魔できるのは嬉しいけど……そこへたどり着くまでのこの階段が……ホントつらくって……」
【メイ】
「申し訳ありません」
【メルリ】
「この階段って、全部で何段あるの?」
【杏音】
「32……33……34……」
【メイ】
「ちょうど300段なので、あと266段です」
【杏音】
「…………」
【kokone】
「階段の両側にはマンションが建ち並んでいるんですね」
【メイ】
「はい。時田邸へ向かう途中の坂道に建っているので、時田坂マンションと呼ばれています」
【杏音】
「自分の名前が地名に使われるなんてカッコイイなあ」
「あたしもいつかそれくらいビッグになってやるんだから」
つづく
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