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初めてのスキー

 初めてスキー場に出かけたのは、確か小学三年生のときだった。
 子供会の行事として、無理矢理参加させられたツアーだったので、面白いはずがない。
 寒いし、ブーツは重いし、おまけに靴擦れまでできるし。
 結局、スキー板を履く前にリタイアしてしまった。

 初めてスキー板を履いたのは、高校の卒業旅行。
 気の合う友人たちと、わけもわからず遊んでいるうちに、いつの間にか滑れるようになっていた。
 そうなるとものすごく楽しい。
 どうしてもっと早くこの面白さに気づかなかったかと、悔しくなったくらいだ。

 そして気がつけば、年間滑走日数50日以上のスキー馬鹿。
 もっとスキーの楽しさをみんなに知ってもらいたいと、e-NOVELSでスキーエッセイの連載を始め、さらに準指導員検定にもチャンレジ。
 なんとか合格し、この春、晴れて指導員の端くれとなった。

 先日、課外授業でやって来た中学生に、初めてスキーを教えた。
「先生、スキーって楽しいね。また来たいな」といわれたときは、涙が出るくらい嬉しかった。
「靴擦れごときでリタイアするなんてもったいないよ」――それが僕の口癖になりつつある。


〈ダ・ヴィンチ〉2005年6月号 掲載

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