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CASE27 運命のほくろ殺人事件《解決編》

「写真をよく見て。木持割雄の泣きぼくろは右目の下にあるはずなのに、その写真では左目の下にあるでしょ? たぶん、警察の人間が急にやって来たものだから慌ててしまい、ほくろをつける位置を間違えてしまったんだと思う」
「つまり、これはつけぼくろってことですか?」
「ノンノン。彼はおそらく、自分のほくろを自由自在に操ることができたのよ
「はあ?」
「普段から、ほくろにいろいろな芸を仕込んでいたんじゃないかしら。隣の部屋を盗聴していた彼は、富田新之助のプロポーズに対し、河合杉子が〈はい〉と手紙に書き綴ったことを知り、焦ったのね。だから、全身のほくろに命じたの。『可愛杉子の書いた手紙に貼りついてこい』ってね。ほくろは木持割雄の身体を離れて、ドアの隙間から隣の部屋へと侵入。命じられたとおり、〈は〉の文字の右上にふたつずつ張りついたんだと思うわ」
「…………」
便箋にはたくさんの〈はい〉が記されていたけど、そこにほくろがくっついて〈ばい〉になってしまったってわけ。仕事から戻ってきた富田新之助は〈ばいばい〉と便箋いっぱいに書かれた手紙を見て、ふられたと思ったのね。だから衝動的にベランダから飛び降りてしまったんだわ」
「あの……いってることがまったくわかりません。ほくろが動き回るって、なんですそれ? そんなことが現実に起こるわけないでしょう?」
「あら。なんにも知らないのね、黒田ちゃん。歌にもあるでしょ」
 銭山警部は咳払いをひとつすると、気持ちよさそうに歌い始めた。
「♪ほくろはみんな生きている~」

                                       THE END

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