VOCADOL 41

FILE.007 時の館殺人事件（２）

▼MAP007-1 台東区

（三段坂）

※夜

【杏音】
「ねえ、ちょっと待ってよお。もう少しゆっくり歩いてくれないかなあ」

【メルリ】
「これくらいの坂道でへとへとになるなんてどういうこと？」

【杏音】
「だって、今日のダンスレッスン、ものすごく厳しかったでしょお？」

【メルリ】
「あれくらいなんてことないわ」

【杏音】
「それに、お腹も空いちゃったし」

【kokone】
「さっき、晩御飯をあんなにたくさん食べたのに？　杏音の胃袋は底なしだね」

【杏音】
「ああ、もうダメ。ちょっとだけ休憩していいかなあ？」

【メルリ】
「ダメ」

【杏音】
「ああああん。メルリの意地悪ぅ！」

【メルリ】
「誰のせいで、こうなったと思ってるの？」

「《トキタ》の元社長さんの家にあなたが財布を忘れてくるから、今夜もまた訪ねることになったんじゃない」

【杏音】
「メイドのメイさんに連絡したら、あたしだけじゃなくて、昨日パーティーに出席した３人全員で来てほしいっていわれちゃった」

「一体、どういうことなのかなあ？　もしかして、ＣＭ出演の依頼とかされちゃったりして」

「うわあ！　そうなったらあたしたち、一躍有名人だね。どうしよう？　どうしよう？」

「俄然、元気が出てきちゃった。なにやってんの？　グズグズしてる場合じゃないよ。早く行こうってば」

【メルリ】
「まったく……おめでたい人ね」

（言門通り）

【杏音】
「あたし、今日は《トキタ》の腕時計をはめてきたんだよ」

「どう？　カッコイイでしょお？」

【kokone】
「へえ、すごい。だけど、《トキタ》の時計ってものすごく高いんじゃないの？　よくそんなお金があったね」

【メルリ】
「あなた、その時計をいくらで買ったの？」

【杏音】
「あまりにもオシャレだから、メルリもほしくなっちゃったの？　なんせ、７万円もする高級品だからねえ」

「これ、フリーマーケットで5000円で売ってたんだよ。ホント、いい買い物をしちゃったなあ」

【メルリ】
「文字盤をよく見てみたらどう？　メーカーのロゴが《TOKITA》じゃなくて《TEKITO》になってるわよ」

【杏音】
「ええ？　嘘でしょ？」

「うわあ、針が取れたあっ！　ゼンマイが飛び出したあっ！　ひいいっ！　ついでに、なんだかわけのわからないものまで飛び出してきたよおっ！　なんてテキトーな時計なの!?」

（戦闘モード　パターン１）

【ディスコード】……敵Ａ
「そこのお嬢さんたち。素敵な時計はいらんかね？」

【杏音】
「うわあ、可愛い！　これ、いくらなの？」

【ディスコード】……敵Ａ
「なんとひとつ300円」

【杏音】
「安い！　買っちゃいまーす！」

「……なんて、さすがのあたしも騙されるわけないでしょ」

【メルリ】
「どうせ、爆弾でも仕掛けてあるんじゃないの？」

【ディスコード】……敵Ａ
「ちっ。ばれたか！　ベルト部分に唐辛子エキスを塗り込んでおいたんだ」

【kokone】
（やり方がせこすぎる……）

【ディスコード】……敵Ａ
「べらんめえ。ばれたとあっちゃ仕方ねえ。だったら、正攻法で攻めるだけだ！　行くぜ、てめーら！」

【メルリ】
「相変わらず、キャラが固まってないわね」

※戦闘モードに突入

【kokone】
「ああ、もう！　道草を食ってる場合じゃないのに」

つづく