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下手の横スキー87

第87回 果たしてスキーは痩せるのか?

 食欲の秋!
 食う。食う。ひたすら食う。遠い海から来た食う。子供だって、うまいんだも~ん♪ 冒頭からいきなり、わけわかりません。
 どーして、こーもお腹が空いちゃうんでしょうね。とことん食べ続けるもんだから、いつの間にやらデブまっしぐら。お腹まわりのアダムスキー型UFOがまた少し成長しましたとさ。めでたし、めでたし。うわーい。喜んでる場合か。
 ……ヤバイ。
 気がつけばメタボ予備軍。本気でシェイプアップを考えなくちゃなりません。
 あ。シェイプアップといえば、あっという間に終わっちゃいましたね、ビリーズブートキャンプのブーム。
 一時期はあちこちで、
「ビリーやってる?」
「あれだけ身体動かせば、絶対痩せるよね」
「ほら、見て。ずいぶん腹筋が固くなったと思わない?」
「私なんて一週間でウェストが2センチ細くなったんだから」
 ってな会話が交わされてましたが、いつの間にやらビリーのボの字も聞かなくなっちゃいました。ボの字は含まれてないけど。
 最近では、
「ビリー? ああ、『東京タワー』の?」
 などといわれる始末。それはビリーじゃなくてリリーだな。好きよ、好きよ、キャプテン♪
 僕もビリーブームに流されてDVDを購入しちゃいましたが、結局、最後までまともにやり遂げたことは一度もありませんでした(反省)。冒頭のストレッチで、早くも「ぎゃあああ。無理いいいいいいっ」と悲鳴をあげてたくらいですから。
 シェイプアップは早々にあきらめ、それ以降は綺麗なお姉ちゃんたちが四つん這いになって片足を上げるシーンばかりを繰り返し眺めていた次第(おい)。

 さて。
 ダイエットやシェイプアップという言葉にはとことん弱い僕ですが、いまだ減量に成功した試しがありません。
 脂肪の燃えるサプリメントを飲んだり、ひたすら豆腐を食べ続けたり、エアロバイクを漕いだり、泳ぎまくったり。でも、なかなか思ったように痩せていかないんですよねえ。結局、どれも長続きしませんでした。
 なにかいい方法はないでしょーか?
 ってなわけで、ここからが本題。

 スキーによるシェイプアップは可能か?

 大好きなスキーで痩せることができるなら、なんの苦労もないわけで。
 僕だけに限らず、日本人はとにかく「痩せる」という言葉に弱いですからねえ。スキーで手軽に痩せられることが証明されれば、若い女性たちが我も我もと飛びついて、スキーブームが再びやって来るかもしれません。をを。それは素晴らしい。
 果たして、スキーで痩せられるのか?
 うーん、どうなんでしょう? ドキドキ。
 で、いきなり結論。
 無理です。
 ……身も蓋もない回答だな。
 いや。一生懸命競技スキーをやっている選手の場合はまた話が違ってくるのかもしれませんが、僕みたいなレジャースキーヤーだと、まず痩せることはありませんね。

 スキーの運動量なんてたかが知れてます。
 たとえば、5キロのロングコースを10本滑ったら合計50キロ。
「をを。フルマラソン以上の距離を滑ったぞお。こりゃ、ものすごい量のカロリーを消費したに違いない」と錯覚しちゃいますけど、実際は重力に任せてただ落下していただけですから。そりゃあ、多少の力は使ってるでしょうが、たいした運動量じゃありません。
 それでもまあ、ゴロゴロ家の中で寝そべってるよりはマシ? うんにゃ、そんなことはない。実際はそれほどでもないのに、ものすごく運動した気分になってるから、そのあとついつい食べすぎちゃったりするんですよねえ。
 スキー場で飲むビールってヤツが、これまためちゃくちゃ美味かったりするから始末に負えません。
 スキー旅行といえば、たいていは泊まりがけなので、夜は当然のように宴会。行き帰りの車内ではお菓子を食べまくり。痩せるはずがないっちゅーの。
 プロのスポーツ選手といえば、筋肉の引き締まった、脂肪なんてまるでないスリムな体型が一般的です。でも、スキーのデモンストレーターとして有名な××さんや△△さん(あえて名を伏す)は、どー見てもぽっちゃり体型。ぶよんと飛び出した下腹には、とても親近感を抱きます。
 日本のトップに立つデモンストレーターでさえそんな状態なんですから、やはりスキーでは痩せられないんでしょうね。
 まあ、逆にいえば、そんな体型であってもスキーは上達するわけで……だから、いつまで経ってもやめられないんですが。
「スキーで痩せることは不可能? そんなことないよ。あたし、スキーを始めてから、一気に痩せたもん」
 えっ? 本当ですか? どのくらい痩せたんです?
「2日で3キロ」
 おお。そりゃすごい。ぜひ、スキーで痩せる秘訣を教えてください。
「天気の悪い日に出かけてね。立ち入り禁止区域に侵入するの。遭難したあとしばらく救助されなかったら、確実に体重は落ちるわよ」
 ……それって、スキーで痩せたわけじゃないですよね?
「あ。じゃあ、こーゆーのはどう? 30分で1キロ減量」
 30分で1キロ? ホントですか?
「うん。立木に激突して大量に流血すれば、それくらい簡単なんじゃない?」
 勝手にやっててください。

 さてさて。
 スキーによるシェイプアップを否定しながらも、ここ数年、僕の体重は冬場になるとガクンと減少します。
 理由は明らか。スキースクールに勤めているからなんです。
 ただ漫然と滑ってるだけじゃ痩せません。でも、スキー経験のない子供たちへの指導は、莫大なカロリー消費に繋がります。なんせ、歩きにくい雪の上を、重たいブーツを履いてひたすら移動するわけですからね。
 初めて滑る子供たちを、いきなりリフトに乗せるわけにもいきません。なだらかな坂を何度も登ったり降りたり登ったり降りたり。ひたすらそれの繰り返し。とくに、最初は一人一人にくっついて教えないと、どこへ滑っていっちゃうかわかりませんから、たとえば10人の受講生がいたら、坂を10往復しなくちゃなりません。これはかなりハードですよ。
 転倒して起きられなくなった受講生を引っ張り上げたり、止まれずに見当違いの方向へ滑っていった受講生を追いかけたり……。絶対に痩せます。ビリーよりも効果があることは間違いなし。僕の場合、飲み食いした量は普段より多かったにも拘わらず、わずか1ヵ月で3キロ以上体重が減りました。
 というわけで、痩せたい人はスキーのインストラクターになるべし! ただし初心者専門でね。受講生がリフトに乗れるようになっちゃうと、一気に指導も楽になり、再びデブまっしぐらな道のりが待ち受けてますから。

 さあて、次のシーズンはどれくらい痩せられるかなあ? ……アダムスキー型U(うざいほどに)F(ふくらんだ)O(お腹)を見下ろしながら、そんなことを考える黒田なのでした。

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