CASE06 怪力人間殺人事件《解決編》
「一番の稼ぎ頭であるアフリカ象のタローが死んでしまった。このままでは客が集まらなくなってしまう。原因は怪力人間が無理な絶食をさせたため。団長は『おまえのせいだ!』と怪力人間を罵り、二人は口論となって……。いい逃れはできないわ。名前が怪しいのがなによりの証拠よ!」
「警部、さすがにそれはなんの証拠にもならないかと――」
「いえ」
黒田刑事の言葉をさえぎったのは団長だった。
「なにもかも警部さんのおっしゃるとおりです」
その場に膝をついてがっくりとうなだれる団長。
「えええええ? あなたももう少し粘りましょうよ」
「死んだタローを怪力人間に持ち上げさせて……それから脇をこちょこちょこちょぉとくすぐってやったら、あいつはタローの下敷きになって死んでしまいました」
「どうして? 象はいくらだって取り替えができるけど、象を持ち上げることのできる怪力人間なんて世界に二人といないのよ。そんな貴重な人を殺すなんて……あんたは大馬鹿者よ。ばかばかばかばか!」
「いえ、象ってのは、あなたが思ってるほど簡単に手に入れられるものではないんですよ。私にとっては怪力人間より、象のほうが何百倍も大切だったんです」
「どうしてよ? 象なんてお金を積めば、いくらでも買うことができるじゃない」
「いいえ」
団長は涙を浮かべながらぼそりと呟いた。
「……象は問屋が卸さないんです」
THE END
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