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CASE19 謎のぺちゃんこ殺人事件《問題編》

 その日、銭山警部は自宅アパートで自慢の手料理を作っていた。
「ふんふんふーん♪」
 ずいぶんとゴキゲンらしく、鼻歌も絶好調だ。
 室内には色とりどりのリボンや花が飾られている。テーブルの上には大きなバースデーケーキと高級シャンパン。そう――今日は黒田刑事の二十七回めの誕生日。大切な部下をご馳走でもてなし、あわよくば肉体を奪ってやろうと企んでいる警部なのであった。
 黒田刑事へのプレゼントはXXデパートの玩具売場に電話注文しておいた《裸にひんむいて遊ぼうぜ! 等身大イケメン人形》。そろそろデパートからプレゼントが配達される時間である。
 と、そこへ黒田刑事が飛び込んできた。
「あら、黒田ちゃんったら気が早いんだからぁ。約束の時間まではまだ二時間もあるのよ。むふ。そんなにあたしの顔を見たかったの。この寂しがりやさん♪」
「違います。事件ですよ、警部。三十分ほど前、公園のベンチで昼寝をしていた男性が不審な死を遂げました。大勢の人の目の前で、突然ぺしゃんこになって息絶えてしまったんです。遺体を確認しましたが、いや、これがもう悲惨なありさまで。目に見えない巨大ななにかに押しつぶされたとしか思えません。史上最大のミステリーです」
「どうでもいいじゃない、そんなこと。『圧死したのは誰?』『それはあっしです』……ぷぷ、ぷぷぷ。今日のぜにーちゃん、冴えてるぅぅっ!」
「事件はそれだけじゃないんですよ。ほら、あれを見てください」
 黒田刑事は窓の外を指し示した。ここからだと、XXデパートがよく見える。
「いつもよりもデパートが低く見えるでしょう? あのデパートは八階建てなんですが、一時間ほど前に突然、七階建てに変わってしまったんです」
「え? どーゆーこと?」
五階のフロアが一瞬にしてなくなってしまったんですよ! 五階の玩具売場は大勢の親子連れでににぎわっていましたが、全員行方不明です。これはもう前代未聞の大事件ですよ」
「公園で圧死した男……消滅したデパートのワンフロア……わかったぴろぴろぴろぉん。ぜにーちゃん、あったまいいぃぃ! 謎はすべて解決よ」
「え? もしかして、ふたつの事件は関わり合っているんですか?」
「モチのロン」
 銭山警部は得意げに鼻の穴をふくらませた。

《ぜにーちゃんからの挑戦状》
 人間業とは思えないふたつの奇妙な事件。この事件の驚くべき真相は? あなたも推理してみてね。うふ。

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