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下手の横スキー08

第8回 続・夏スキー!

 ぐあああああ。
 一体なんなんですか、今年の暑さは?
 7月に入ったばかりだというのに、連日30℃を越える真夏日。このペースで気温が上がれば、八月の終わりには、たぶん100℃くらいになってますよ。そうなりゃ当然、みんなばたばたと道端に倒れてお陀仏状態。これがホントの沸点ころりん。

 ……今日のところはこれくらいで勘弁しといてやらあ。

 皆さん、こんにちは。友人の披露宴で女装して踊り狂っている間に、財布を盗まれてしまった黒田研二です(マジ)。
 灼熱の太陽が容赦なく照りつけるこの季節、雪山を舞台にしたサイコ・ミステリなど読んで、暑さをしのぐっていうのはいかがでしょう?
 え? 7月20日に光文社カッパ・ノベルスから、二階堂黎人・黒田研二共著の雪山サイコ・ミステリ『永遠の館の殺人』が発売されるって? そりゃあ、いい。ぜひ、読むことにしましょう。スキーに出かけたカップルが、突然の吹雪で遭難。命からがら逃げ込んだ山荘には謎の殺人鬼が……ってなお話であります。
 笠井潔さんが書いてくださった帯の推薦文は、スキーヤーならニヤリとするであろう名文句です。読まなきゃ損、損、ソン・ガンホ。
 以上、露骨なPRでした。

 さて、東野圭吾さんと共にやって来た月山・夏スキーツアー。
 途中、道に迷ったり、リフト乗り場までの長い道のりに気絶しそうになったり、危うくスキー板を落としそうになったりと、数々の困難にぶち当たってきましたが、それを乗り越え、ついに山腹までやってまいりました(感激の涙)。

 これでようやく滑れるのかと思ったら、ありゃりゃりゃりゃあ。リフトを降りたあとも、まだまだ山道は続きます。
 しかも、めちゃくちゃハードな行程。歩きやすくするための処置なのか、道の上に板が敷いてあったんですけど、すでにボロボロに腐っていて、一歩踏み出すごとにバキベキボキッ! ものすごい音を立てて崩れ落ちていきました。
 ……ここはびっくりハウスですか?

 板地獄のあとに待ち受けていたのは、岩地獄。形のバラバラな岩の上を、バランスを崩さないように歩かなくちゃなりません。
 スニーカーでも苦労しそうな道のりを、スキーブーツで歩くわけですから、もう大変。しかも、岩の下は雪解け水でぬかるんでいるため、誤って踏み外せば、ズボンの裾まで泥まみれです。
 ……ここはアスレチックワールドですか?

 滑走中に石などを踏みつけて、スキー板に傷がつくかもしれないなあ──という心配はしていましたが、板よりもブーツのダメージのほうが確実に大きかったですね。
 これから月山へ行かれる方、新品のスキーブーツを持っていくのはやめたほうがいいでしょう。

《月山スキーを楽しむためのアドバイス・5》
 リフトを降りたあとの山道は、さらにハード! スキーブーツの取り扱いには注意!

 板地獄、岩地獄と続いたら、次はイカ地獄か?
 ぬるぬるどろどろぐちょぐちょの巨大イカの上を歩かされたらどうしよう? と心配してたんですけど、さすがにそこまでものすごいトラップは用意されておらず、ようやくたどり着きました。
 雪だあっ! ゲレンデだあっ! 夢にまで見た夏スキーだあっ!
「すげえええっ!」
 思わず叫んじゃいましたよ。だって、ものすごい広さなんだもん。
 高い木がほとんどないから、見渡す限りゲレンデ、ゲレンデ、ゲレンデ。コース規制もほとんどありません。どこを滑ってもオッケーだなんて、まるで海外のスキー場みたいです。

 早速、滑りました。
 いやあ、最高っ! 遠くに見える風景はカンペキ夏模様なのに、なぜか僕の周りだけ雪がある。
 砂漠の中のオアシスにいる感じっていうか、周囲は大雨なのに僕の頭上だけ晴れ渡っている感じっていうか、女風呂に男一人堂々と浸かっている感じっていうか、とにかく不思議な印象を受けました。
 しかも、Tシャツ一枚で雪山を滑るっていうのは、素っ裸で街なかをうろつくのと同じくらいの解放感がありますね。気持ちいいっ!

 月山の名物といえば、やはりコブ斜面。とにかく、滑りごたえがあります。ぱっと見た感じは楽に滑れそうなんですけど、これがなかなか手強い。
 制覇しようと躍起になっているうちに、あっという間に1日が終わってしまいました。
 転んだわけでもないのに、グローブはぐしょ濡れ。一本滑るごとに濡れたスキー板をかつがなくてはならないんで、どうしてもそうなっちゃうみたいです。

《月山スキーを楽しむためのアドバイス・6》
 防水加工したグローブでも、間違いなくぐしょ濡れになるぞ! 安いグローブをたくさん持っていくのが賢明。

 夜は酒を酌み交わしながら雪山談義。スキーのあとのビールは格別です。
「今後一生、スキー後のビールを我慢する代わりに、初版部数を五千部アップするといわれたら、どうする?」
 といきなり東野さんに尋ねられ、悩む僕。うーーん、これは難しい問題だ。
「一生、オ●ニーを我慢しろといわれたら、五千部アップをあきらめますけど」
「誰もそんなことは訊いてねーよ」
 うーーん、うーーん。悩みに悩んで、今もまだ結論は出てません。こーゆー馬鹿話も、スキー旅行の醍醐味のひとつですね。

 翌日は、激しい肩の痛みで目が覚めました。転んだわけでもないのに、どうしたんだろう? と鏡を覗いてみると、うわあ、真っ赤に腫れあがってるよ。
 Tシャツの上からスキー板をかついだせいで、皮膚が圧迫されたらしい。冬は分厚いスキーウェアを着ているから、長時間かついでもそれほど苦痛を感じないんですが、薄いTシャツではダイレクトに衝撃が伝わっちゃうんですね。今後、注意します。

《月山スキーを楽しむためのアドバイス・7》
 スキー板の重みに耐えるため、肩を強力にガードすべし! タオルを一枚当てるだけでも、かなり違うぞ!

 残念ながら、2日目は雨に祟られてしまったんですが、それでも出発時刻ギリギリまで滑っちゃいました。だって、めちゃくちゃ楽しいゲレンデなんだもん。

 いやあ、最高の2日間でした。機会があったら、ぜひまた行きたいものです。

 自分用のお土産として、「月山」の文字が入ったTシャツを購入。旅行から戻ると、早速それを着て街に出かけました。
「ををををををっ!」
 みんな、僕のTシャツを見て、期待どおりの反応を示します。
「くろけんさん……そのTシャツ……」
 ふふふ。どーだ、すげーだろ。月山に行ってきたんだぞ。
「乳首が透けて見えてますよ」
 ……え゛?
 あああああ。仕方がないか。1000円だったもんなあ。安物買いのジェニーはご機嫌ななめ。
 恥ずかしいから、このTシャツ着るときはニプレスを貼ることにします(よけい恥ずかしいです)。

《月山スキーを楽しむためのアドバイス・8》
 お土産のTシャツは1000円とかなり安い! でも、乳首が透けて見えちゃうぞ!

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