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CASE26 ゲテモノ料理殺人事件《問題編》

 深夜。四畳半の薄汚い部屋で、お腹を壊した銭山警部が苦しそうにのたうち回っている。どうやら、賞味期限を過ぎた弁当があたったらしい。
「あああ。痛い、お腹が痛いぃぃっ! 産みの苦しみって、ひょっとしたらこんな気分なのかしら。うふ。って、乙女チックになってる場合じゃないわ。本当に痛いのよぉっ!」
 ぎゃあぎゃあわめきちらしていたところに、ノックの音が響き渡る。
「銭山警部、夜分遅くすみません。事件です」
 現れたのは黒田刑事だった。
「あああああ。黒田ちゃん、いいところに来てくれたわ。撫でて、撫でてぇん。あたしのお腹をナデナデしてほしいのおっ!
 銭山警部は上着を脱ぐと、黒田刑事の目の前に、でっぷり突き出た下腹部を突きつけてきた。
「ほうら、ほらほら」
「そんなことやってる場合じゃありません。殺人事件です。ゲテモノ食いタレントとして活躍中の何出茂食太(なんでも・くった)が殺されました。銭山警部もご存じのとおり、食太は生きている金魚を食べたり、電球を食べたりして、人気を集めているタレントです。今日、テレビのスペシャル番組《豪華ゲテモノ料理を食う!》にゲスト出演していたところ、急にお腹を抱えて苦しみだし、そのまま息絶えてしまったとのことです」
「あらら。豪華ゲテモノ料理って一体、なにを食べたわけ?」
「前菜として、ガラスの破片のあっさりサラダ。それから、農薬入り健康スープ。メインディッシュは乾電池のステテコ巻き硫酸あえ。デザートはビー玉の青酸カリ入り南蛮風唐揚げだったそうです。……まともな食材はひとつもありませんね」
「普通の人なら間違いなく即死だわ。でも、被害者はあの何出茂食太。これくらいのことで死ぬなんて、おかしいわ」
「でしょ? だから番組のスタッフは、誰かが料理に毒を仕込んだんじゃないかと、疑っているみたいです」
「毒っていったって……青酸カリを一気飲みしても平気な男なのよ。一体、なにを食べたら死ぬっていうの?」
「だからそれを警部に推理してもらいたくて、貞操の危険を感じながらも、ここまで来たんじゃないですか」
「そういわれてもねえ。あたし、お腹が痛くて、考えが全然まとまらないのよ。やっぱり料理は新鮮なモノを選ばなくちゃダメね」
 銭山警部がため息をついたと同時に、電話のベルが鳴り響いた。黒田刑事は懐から携帯電話を取り出し、二言三言喋ると銭山警部の顔を見た。
「警部。解剖の結果、死因がわかりました」
 通話を終えた黒田刑事が淡々と答える。

《ぜにーちゃんからの挑戦状》
 ゲテモノ食いタレントの何出茂食太は、なぜ死んじゃったのかしら? あなたも推理してみてね。うふ。

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