見出し画像

CASE42 天才発明家殺人事件《問題編》

「警部、事件です!」
 いつもと変わらぬパターンで、黒田刑事が飛び込んでくる。
 部屋の中央では、下半身を丸出しにした銭山警部が、顔を真っ赤にしながらのた打ち回っていた。
「……なにをやってるんですか?」
「あ、黒田ちゃん。ちょうどいいところに来てくれたわ。あたしの股間をうちわで扇いでくれる? じめじめした日が続くもんだから、インキンになっちゃって。とってもよく効く薬をもらったんだけど、これがものすごくしみるのよぉ」
「インキンのかゆみなんてすぐに忘れちゃうくらいの大事件が発生しました。大学教授の江地尊(えじ・たける)さんが殴り殺されたそうです」
「あら。江地尊といえば、ドラ○もんのひみつ道具に迫る勢いのものすごい発明品をいくつも作り出している天才科学者じゃない」
「しかも、完成目前だった新しい発明品が、現場からなくなっていたとのことです」
「あらら。犯人の目星は?」
「事件直後から行方不明になっている研究員が一人おりまして、おそらくその男が発明品目当てで教授を殺害したのではないかと」
「そいつはまだ捕まっていないの?」
「教授の身に異変が起こったことを防犯センサーが感知し、すぐさま研究所は封鎖されました。おそらく犯人はまだ所内に立てこもっているものだと思われます」
「だったら、そいつが捕まるのも時間の問題ね」
「それが……警察官を総動員し、隅から隅までしらみつぶしに捜したのですが、いまだ容疑者は見つかっておりません」
 黒田刑事は眉根を寄せながら、申し訳なさそうに答えた。
「捜索中になにか変わったことはなかった?」
「いいえ、とくになにも。……あ、ひとつだけありますが、でもこれは事件とはなんの関係もないかと」
「関係ないかどうかはあたしが判断するわ。なにがあったの?」
「あの……殺された江地教授は身体を鍛えることが趣味でして、研究所内には握力をつけるためのクルミがいくつも置いてあったんです。その中に、いつの間にか餃子の皮が紛れ込んでいました
「はぁ? 餃子の皮?」
「最初に調べたときは、そんなものは置いてなかったはずなんですけど、しばらく経ってもう一度クルミの入った皿を見てみると、そこになぜか餃子の皮が混ざっていまして」
 銭山警部の瞳がきらりと光る。
「黒田ちゃん。もしかして、研究所の中はものすごく寒かったんじゃない?」
「はい。研究中の薬品の鮮度を保つため、室内は常にマイナス五度に保たれていたそうです
 黒田刑事のその言葉を聞き、銭山警部の脳はフル回転した。
「わかったぴろぴろぴろぉぉん。ぜにーちゃん、あったまいいぃぃ!」
「え? 犯人の潜伏場所がわかったんですか?」
「モチのロン」
 警部は満足そうに頷いた。

《ぜにーちゃんからの挑戦状》
 江地尊教授を殺した犯人は、どこに潜伏していたのかしら? あなたも推理してみてね。うふ。


※解決編はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?