BOOK☆WALKERは止まらない

先日メールで気づいたんだけど、ブックウォーカー(正式にはBOOK☆WALKER)に登録している自分の「らくがきコピー本」が、まだ月に数冊程度のペースで売れているらしい。
登録して数カ月は一応売れる数などを見てたものの、最近は忙しいのもあって全く見ていなかった。

これは即売会で売ったコピー本を、Kindle等のいくつかの電子書籍サイトに登録したなかの一つなので、元が「らくがきコピー本」で一年経っている事を考えると「ブックウォーカーだけで月に数冊」、というのは思った以上の数字だった。

しかも自分が告知リンクを貼るときは初回以外はアマゾン(Kindle)だけ、という事が多いので、予想外だったのと同時に、「なんかごめん」という気持ちが出て、この記事を書くことにした。

上は自分の著者ページ。著者名で検索すると、商業誌と一緒に同人誌も出てくる。


ブックウォーカーのBOOK☆WALKER

BOOK☆WALKERは、カドカワグループの「ブックウォーカー」が運営している電子書籍配信サービスで、登録だけで読める無料書籍が多い事が特徴。
この辺は、歴史が長く大きな出版社グループの強みが活かされてる感じ。

設立は意外と古く、ブックウォーカーの前身株式会社角川モバイルは2005年に出来て、翌年には携帯用の「ちょく読み」サービスが始まっている。2010年に電子書籍参入。社名がブックウォーカーになったのは2012年。

個人出版サービス「BWインディーズ」は2015年から始まる。

これに関しては、知らない人も多いんじゃないかと思う。
実際自分も、存在は知っていたものの、同人誌を電子書籍化する時の選択肢には無かった。いくつかの電子書籍サービスに登録したつぶやきをしたら、「よろしければうちにも登録しませんか」といった趣旨のDMが来て、「えっ百合同人誌とか扱ってるの??」と、その時に改めて色々調べ直した。

それまで取り扱っているのは硬い一般向けの自費出版系だと思っていたのだけど、イメージと違って普通に「同人誌」を取り扱ってるし、成人向けも登録出来る。

自分同様にイメージがなかった方は、サイトをみると驚くだろうと思う。上のリンクは同人ページなので、トップに並ぶものはすべて同人誌である。


JMangaって知ってるかい

出版社主体の電子書籍総合販売サービス、といえば(ご存知かもしれないが)、海外向けで一度立ち上がって、なんだかんだあってあっという間に消えたものがある。
「JManga」というサービスだ。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1303/19/news119.html

「海外向けの漫画電子配信「JManga」が終了 - ITmedia NEWS」

記事によれば、「価格が高い」「人気作が入っていない」等、客がつかなかった理由が割とはっきりしている。
「海外の海賊版に対抗して」作ったサービスが、高くて品ぞろえも悪く、しかも二年で終了。これには外国のファンも相当がっかりしたろうと思う。そんな事を考えて、当時自分もかなりがっかりした。

ローカライズのコストがあるので、価格はある程度仕方がない部分もあるかもしれない。でも「人気作が入ってないラインナップ」は、さすがにきびしい。

これは推測だけれど、出版社の内部的に紙の方が上という風潮がまだ強かったろうし(今でもまああるとは思う)、取次や書店等の付き合いがあるため営業部がいい顔をしない…、という感じで、こんな値段やラインナップになったのだろうな、と思う。

まあラインナップ以前に、当時の出版社業界は全体的にネットそのもの、デジタルへの理解度が低かった。この辺の対応に関しては、同人誌印刷所の方がよほど先を言っていた。

今は出版社は総じてその辺の認識や、ネットやデジタルに大しての理解度もかなり上がっている筈なので、もしかしたら今からまた同じ規模で始めたらうまく行くんじゃないかなーとも思うけれど、「既に一回やって失敗した」というイメージは、社内、社外(買い手)ともに強いし、難しいだろうなと思う。


ネットでの商売の難しさ

この失敗はただ出版社が悪いというより、根本的にネットの販売事業は「一人勝ちになりやすい」面もあって、一概に批判は出来ない面もある。

まずほしいものがあれば検索をする。すると、地域も何も関係なく大手がトップにでてくる。そして買い物をするには面倒な登録が必要で、手間だけでなくそのサイトは信用出来るのか、等色々な要因を考えると、「一ヶ所で済むなら済ませたい」となるのは自然な流れだと思う。

ネットにはアマゾンを始め、ネットでの商売に特化した強力すぎるライバルが既にいて、そしてまた、地の利がないネットでは住み分けが難しいのだ。


なぜブックウォーカーは残ったのか

そんな中、ブックウォーカーは利益を上げ続けている。

これの成功の要因は、カドカワグループの社風によるものが大きいのだろう、と思う。

誰もが知っている「角川映画」は元々、書籍を売るためのメディアミックス戦略として始まって、角川は映画に積極的にお金を出した。
当時テレビを毛嫌い・馬鹿にしていた映画業界の風潮も関係なく、バンバンテレビCMをうって認知度をあげ、結果ヒットにつながった。

角川はかなり早い段階で角川ブランド映画を成功させていて、映画がヒット+原作本もヒット、という一人win-win状態を実現している。
書籍コンテンツのメディア化」という分野では、日本の出版社の中でもかなり攻めてるというか、頭いくつか分先を行った会社なのだ。

そんなカドカワグループだから、電子書籍部門にしても、「他がやったからやる」という日本でよくある消極的日和見スタートではなく、かなりの具体性をもって攻めの姿勢でやっている…と思われる。
(実際、登録するだけで読める無料コンテンツを大量に用意して、人気作をどんどん投入、と件のJMangaとは真逆の方向になっている。もちろん、海外向けはローカライズやらの手間とコストが加わるので、単純比較は出来ないけれど)


BOOK☆WALKERは去年末から、月額760円で角川文庫・ライトノベルが一万冊以上が読み放題サービスも始まった。まだまだこの勢いは続くだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?