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思い出のPETER BEIER

旅行に出かけると、特に海外に出かけるとチョコレートは土産の定番である。比較的アクセス良く買えるし、日持ちもする。帰宅して食べれば、購入したときの思い出とともに甘い味わいを口腔内に残す。そしてかさばらない。割と旅はしてきた方だが、土産で欠いたことがないのはチョコレートとご当地マグネットくらいではなかろうか。

社会人になってからは、ちょっと良いチョコレートをバレンタインに購入し楽しむことが趣味にもなった。幸い日本は各国各地のチョコレートが一年に一度大量に輸入輸送されデパートに集結する。そのたびに昔旅した土地に思いを馳せたり、新しいチョコレートを見て、その場所に行ってみたいと思う。その中でももっとも自分の中で印象深いのが、タイトルに挙げたデンマークのチョコレート、PETER BEIERである。今は残念ながら旅行に行けないので、チョコレートと思い出をここに記して、いつか再訪の候補に挙げておきたいと思う。


まだアラサーの真ん中だった頃に、仕事で海外に行くことになった。5泊7日くらいの日程で、夕方まであるシンポジウムにも参加するので、できれば上司についてきてほしいと思ったが日程的に難しく、最終的にわたしは一人で出張することになった。(今考えると、自費で実家の両親を連れて行けばよかったなと思う。)

催されるのが大きなイベントだったために大きな宿は全て満室で、小さな宿もいいお値段だった。Google mapで雰囲気や治安をなめるように確認して、宿と航空券の手配をしてデンマークに飛んだ。

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緊張はしたものの仕事はなんとか済んだ。大きなシンポジウムも聴講して、時代が塗り替わる発表を聞いて鳥肌を立てた。聴講者はみなイベント会場にTake Freeと書置きされた、生のリンゴを各々手に取って齧りながら会場を歩いていたので、自分もそうしてみた。自分が見たことのない自分になったようで気恥ずかしかった。

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イベント参加者はデンマークの主線地下鉄の交通カードをもらえたので、それを使って空き時間に中心地を散策した。厳密なひとり海外旅は初めてで、気持ちはこのうえない自由と解放感があった、つもりだった。速足で闊歩し、宮殿の近くを散策すると、オフィスが半地下によくあり、足元の窓からお洒落なオフィスが見えるのが面白く感じた。カフェではケーキとホットチョコレートを飲み、最後の夜にはステーキとビールを食した。まるで日本にいるか、それよりも身軽に活動したように思う。

帰りの空港で土産物を探していて、PETER BEIERに出会った。ちょうど食べ物の土産を買わなくてはと思っていたので、5,6個入りのチョコレートをいくつか買い、自分用にはミニプレートのチョコレートを買った。

急にお腹が空いたのでカフェに駆け込んでパンとコーヒーにかぶり付き、ふと手持ちのチョコレートを見て、味見をしないのに土産というのも気が引けてひとつ食べた。これがとても美味しくて、今から帰国するという気持ちとリンクしてにこやかな気持ちになったのを覚えている。(カカオのパーセンテージが書かれていたもので、今ホームページを見ると当時の味のチョコレートはもうない。) 仕事のプレッシャーと異国での緊張感がほろっと溶けたようだった。なんだ、自由だと思いながら、私は空港に来るまでずっと張り詰めていたのか、と気がついた。

帰国して、折につけこのチョコレートのことを思い出していたが、当時は日本でこのチョコレートを食べることはできなかった。しかし2018年頃にはPETER BEIERの日本語インスタアカウントが誕生し、バレンタインフェアでも探せば買えるようになってきた。個人的にはWOC(ワールド・オブ・カカオ)のシリーズが好きだ。カカオの形をした小さいタブレットで、どの味もそれぞれ異なり美味しい。

今年は特にデパートのオンラインサイトでたくさんチョコレートが選べたので、ここのチョコレートをこれでもかと買った。時間をかけてひとつづつ食べ、あの時の気持ちを思い出した。

一人か、誰かとになるかは分からないが、いつかまたデンマークに行って、宝石のようなチョコレートをイート・インで楽しみたい。私はその時、どんな気持ちでチョコレートを食べることになるのだろうか。今から楽しみで仕方がない。


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