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駄文

人の感情というのはなぜこんなにも複雑で面倒臭いのだろう。感情というものがなければ、感性というものがなければ、喜びもない代わりに苦しみもないのに。そう何度妄想し、悲願し、絶望したことか。感情と言葉はその実ほとんど同一のものであると考えている。言葉というものがなければ、ある側面で生きることはもっと楽だったに違いない。言葉を紡ぐことは甘美なようでその裏は実に苦い。その主成分は劣等感と嫉妬と憧れであり、言葉に執着しているからこそ味わうものなのだろう。「諏訪哲史」こんな人間がいるのだ世の中には。感性と言葉の神に愛されているのかはたまた呪われているのか。わたしがこれまで読んでいた本が娯楽ならこれは何だ。読んでも読もうとしても入ってこないのに、胸の中で目まぐるしくとぐろを巻くこの感情は何だ。恐れ、慄き、尊敬、渇望、希望、絶望、分からないのに頁をめくる手が止まらないのだ。そんな中、ゾッとする言葉だけはちゃんと入り込んでくる。己の感性の強さに辟易している者、言葉に取り憑かれている者、一緒に地獄を見ようではないか。


岩塩の女王 p36-11行目

幻聴譜 p149-13行目

意味が分からなくともここまで読んでほしい。そして嗚呼自分は決してこの呪縛からは逃れられないのだという絶望を糧に、感性に浸り、筆を取り、そうやって生きていこうではないか。

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