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ギターと髪
午前3時、車の中で
大学の先輩が語った物語を、
忘れないように書き留めておく。
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あるところに、貧しい夫婦が暮らしていた。
夫はギターを奏でるのが好きで、妻は美しく長い髪をもっていた。
ある日、夫は妻にプレゼントを贈るため、大切にしていたギターを売った。
そして夫は、妻の喜ぶ顔を思い浮かべながら、素敵な櫛を買った。
家に帰ると、妻の美しく長い髪は、短くなっていた。妻の手には、夫が欲しがっていた銀のピック。
妻は、夫に銀のピックをプレゼントするために、自分の美しい髪を売ったのだった。
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この物語を先輩が話してくれたのは、私が
「必要なときに、必要なものが、必要なだけあることが幸せ」という話をしたからだ。
そんなわけで、私はこの物語に共感し”あたたかい話だ”と思った。
この夫婦は貧しさではなく、目の前にある満たされたものに目を向けて、幸せを感じていたのだ。
作者自身も、大変貧しい暮らしをしていたという。なるほど、だからこんな物語が書けたのか。
ところが、アルコール中毒の果てに息を引き取ったのだそうだ。
この物語はあたたかい”だけ”の話なのだろうか。
夫婦がお互いの失ったもの、引き換えになったものを知ったとき、どんな表情をしていたのだろうか。
ふむ、まだまだ語れそうだ。
今日はここでおしまい。
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