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映画レビュー take3

 黒川エキスポの映画レビュー
 今回レビューする映画はスティーブン・エイムズ監督の『THE HERO』

あらすじ
 エリック・ジェームスは未来予知、銃に撃たてもびくともしない体、トラックを軽々持ち上げるパワーを持つスーパーヒーロー。しかし彼は予知能力を活かして罪を犯す前の犯罪者を説得し、思い留まらせるために暴力ではなく言葉で戦っているのだった。そう彼の敵は宇宙からの敵でもなければ、大量殺人を目論むテロリストでもない。犯罪に手を染める人間の弱い心こそが彼の敵なのである。エリックが幼い頃、貧しさから強盗に加担してしまった父のような人間を少しでも救いたい。そのために彼は戦い続ける。

感想
 貧困とか差別などに苦しむ社会的弱者を題材にしてきたスティーブン・エイムズ監督のヒーロー映画ということで、鑑賞前は彼の作風とヒーロー映画はあんまり合わないんじゃないかと思っておりました。しかし、ヒーローとは何か?ということに向き合った非常に素晴らしい作品でした。良い意味で期待を裏切られました!スティーブン・エイムズ監督本当にごめんなさい!

 強力な敵や巨大な悪と戦わないで普通の犯罪者が罪を犯す前に救うヒーロー映画っていうのがとても斬新で面白かったです!もちろん必ずしも説得して止めることなんてできるわけがなく、説得しても止められない時は相手の脚や腕の骨を折って相手が犯罪者になるのを食い止めます。ただ、そこで終わるのではなくそのまま相手を病院に連れて行き、自分は傷害罪で警察に自首しに行って暴力の責任はしっかりととります。

 言葉で説得できないからって力に頼ることはきっと正しくはないでしょう。しかし、自分が捕まってまでも相手を犯罪者にさせないという強い信念に心が打たれました。

 そして、最後のヴィラン(今作にヴィランの概念があるかはわかりませんが)である弟のジャックとの戦いは胸が締め付けられるような悲しい戦いでした。

 ジャックが大学の入学金と学費のために仲間と共謀し銀行強盗をして成功する未来を見てしまい、示談金の支払いで精一杯で金銭面で弟のために何もしてやれない自分に止める資格があるのか葛藤します。そして、自分が何もしなければ弟が大学に行けるかもしれない。何をしてでも弟を大学に行かせてやりたい自分の心の弱さという今作最大の敵との戦いが待ち受けていました。

 「今まで何もしてこなかったくせに、こんな時だけ邪魔しないでくれ!」というジャックの言葉に心が折れかけますが、その時のジャックの目がエリックが幼い頃に強盗で捕まった父と同じ目をしているのに気づき、涙ながらにジャックの脚と腕をへし折る姿は僕も涙なしには観られませんでした。

 エリックが幼い頃、犯罪を犯す前の父が言った「ヒーローとはどんな時でも誠実で、誰かのために自分を犠牲にできる人間だ」という言葉はスティーブン・エイムズ監督が出したヒーローとは何か?ということへの答えだったのではないでしょうか。

 派手な戦闘シーンなどのエンタメ要素は全くないですが、ヒーローとは何か?ということに向き合った最高のヒーローとはだったと思います!

 こちらの作品には黒川アカデミー賞最優秀正義とはなんぞや?と考えさせられる作品賞を差し上げたいと思います!

 まぁこんな作品この世界に存在しないんですけどね!

 それではまた次の作品でお会いしましょう!

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