見出し画像

TRPGシナリオ創作論 -3- クリーチャーと人間の関わりについて考える

はじめに

 こんにちは。黒崎江治です。Role&Roll Vol.203(新紀元社)に掲載された拙作『外から訪れたもの』(新クトゥルフ神話TRPGシナリオ)。いまのところそこそこ評価されているようです。ありがてえ。

 新クトゥルフ神話TRPG関連書籍について、『マレウス・モンストロルム Vol.2 神格編』が、10月末に発売されますね。

 Vol.1 クリーチャー編は既に発売中。今回はそれに言及しつつ記事を書いていこうと思います。

 載っているクリーチャーは、ルールブック掲載のヤツらに比べるとマイナーで、プレイヤーとしても目にする機会が少なく、あまりイメージが湧かないゆえに、シナリオで登場させることに難しさを感じる人も多いのではないかと思います。

 私自身はルールブックに載っているメジャーなクリーチャーを、ちょっとひねった形で使うのが好きです。でも、マレモンから引っ張ってきてシナリオに使うとなったとき、自分ならどんな部分に注目してクリーチャーを選ぶんだろう、ということを考えました。

 考えたところ、一番大事なのはそのクリーチャーがどうやって人間(社会や探索者)と関わるかという部分かな、という結論に。その部分を煮詰めていくと、シナリオの背景・構成がおのずから決まってきて、マイナーなクリーチャーでも、うまくシナリオに組み入れられるんじゃないかな、と。

 以前の記事では「タイトルから考えろ」みたいなことを言いましたが、そういうインスピレーション的なシナリオ創作とは別の方法として、考察・考証を軸にしたシナリオ創作のやり方もありだと思います。以下では、シナリオ創作のとっかかりとなるようなクリーチャーの分類を書いていこうと思います。

 クリーチャーと人間が関わったときに物語(シナリオ)が生まれる。クリーチャーと人間の関わり方を考えると、シナリオ作りのヒントになるかもしれないね、ということです。

※以下、『マレウス・モンストロルム Vol.1 クリーチャー編』のことは『マレモン1』と表記

わりと人間に近しいヤツら

 生態・生息域的な意味で、人間社会と接触しやすいタイプのクリーチャーがいます。割と登場頻度は高いですね。深きものは棲み処こそ海ですが、人間と交配できるすごいヤツ。蛇人間はかつての生態的地位を人間に奪われ、虎視眈々と復古を狙い、それなりの数が社会に潜伏しています。ミ=ゴも人間を捕まえたり取引したりして、地球での活動に役立てることが多いですね。あとは人間との境があいまいなグールとか。

 彼(?)らは生存や主要な生産活動、種としての目的の一部において、人間社会との関わりを持つクリーチャーです。

 シナリオにおいては、コミュニティをまるっと支配していたり、一部で深いところまで浸透していたり、権力者を裏で操っていたり、という立場が考えられます。人類は片っ端からぶっ殺すぜ! という態度はあまり取らないので、場合によっては交渉が可能かもしれません。

 このタイプのクリーチャーが登場するシナリオでは、閉鎖的なコミュニティに潜入して目的を達成したり、コミュニティに迷い込んだり、ピンポイントで暗殺して計画をくじいたり、という構成が考えられますね。しばしば多くで群れているので、殲滅は難しいかもしれません。

 ルールブックに載っておらず、マレモン1に載っているクリーチャーだと、精神寄生体ゾ・トゥルミ=ゴあたりがこのタイプでしょうか。

 亜種としては、神格に近い強力なクリーチャーが、教団を作っていたり、小規模なコミュニティであがめられていたり、というような関係。この場合種としては強力でなくとも、魔術を習得したマッシブな個体かもしれない。

事故的に人間と関わるヤツら

 基本的に人間と関わることがないタイプのクリーチャー。ただ、なんらかの理由で生息域(異界?)から出てきたり、封印が解かれたり、魔術師によって召喚されたりした場合に、事件が起こります。

 ある存在がいるべきでないところにいると、なにか変なことになりますよね。本来の宿主でない生物の身体に入った寄生虫とか。

 その変なことに、探索者たちが巻き込まれるか、誰かに依頼されて事件を調べる。クリーチャーの正体がほぼほぼ事件の真相となる。そんなシナリオが考えられます。

 このタイプのクリーチャーは、環境に特異な影響を及ぼしたり(植物の変異、住民の健康被害など)、被害者に異常な死に方をさせたり(肉体の溶解、恐怖にひきつった顔など)することが多いように思います。神話生物の正体を示唆する手がかりを集めていって、場合によっては対処法も準備して、やがて恐るべき存在と対峙する……という構成がありえますね。

 もともと存在してはならないはずのクリーチャーを抹消することになるので、後腐れなく終わりがち。やったぜ大勝利! 的な。

 マレモン1だと喰らうものとか、枯死したものとかがこのタイプに分類されるのではないでしょうか。

無謀なエクスペディションによって遭遇するヤツら

 エクスペディション=遠征。ずばり狂気山脈。

 舞台はたいてい秘境だと思いますが、そういう場所に好奇心旺盛な人間が踏み込んで、ひどい目に遭う。あるいは人類史が覆るような真実を目にして戦慄する、みたいなシナリオ、わくわくしますよね。探索者たちは、迂闊に踏み込んだ危地からの生還を目指す……という構成なんかがあり得るんじゃないでしょうか。

 マレモン1だとチャウグナー・フォーンの兄弟ユグあたり。強力かと思いきや、頑張れば意外と倒せそうですね。

 現代日本だと舞台を見つけるのが難しいかもしれません。あえてやるなら、北海道とか太平洋の離島とかでしょうか。舞台を世界全体に広げればどこかしらありそうです。1920年代とかもっと前の時代には、いろいろなところに未開拓地が残ってましたから、エクスペディションなシナリオも作りやすいと思います。

オリジナルの神話存在

 マレモン1に載っているクリーチャーをサンプルとして、オリジナルの神話存在を作ってみるのもおすすめです。その場合はシナリオに合わせて能力や生態なんかをいじれるという(かなり大きな)メリットがあります。

 あえて神話『存在』と書いたのは、生物という形にこだわる必要はないと思うからです。生物なのかモノなのかよく分からないアーティファクトとか、ミーム的なものとか、そういう存在もシナリオの中心になり得ます。

おわりに

 以上。人間との関係という観点から、ざっくりクリーチャーの分類を試みてみました。マイナーなクリーチャーに出会ってみたいという経験者の欲求を満たせるような、かつ設定がしっかりしているシナリオ、たくさんあると楽しいなあと思います。

 以下は宣伝です。

 クトゥルフ神話の世界観をベースにした小説が講談社から出てます。なんかnoteはじめてから若干売れているような気がしないでもない。私はゆくゆく文章で食べていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?