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能登は道の駅だらけなのか 〜道の駅研究〜

「能登、道の駅ばっかりでは?」

2019年2月7日、人生初の奥能登を体験した素朴な感想です。体感に基づくものなのでなかなか伝え難いものの、かなり頻繁に見かけた気がします。人口の少ない能登地方にこれだけの道の駅があるのは不思議だな、と思ったところで、そもそも道の駅ってどんな感じで分布してるんだ?と疑問に行き当たったところから、道の駅の数と人口・面積を比較した調査をしてみました。ほかの都道府県とも比較しつつ、本当に能登には道の駅が多いのか、見ていきましょう。

※計算データの有料公開はやめました。ご入用の方には無料で差し上げます。

※2019年3月19日、国土交通省の報道発表により、道の駅が追加されました。これに伴い、3月21日に追加された道の駅を反映して加筆修正しました。なお、今後も毎年のように追加登録されることが予想されますが、毎年対応することはありません。


道の駅とは

道の駅公式HPによれば、

「道の駅」は、安全で快適に道路を利用するための道路交通環境の提供、地域のにぎわい創出を目的とした施設で、「地域とともにつくる個性豊かなにぎわいの場」を基本コンセプトにしています。また、「道の駅」は3つの機能を備えており、24時間無料で利用できる駐車場、トイレなどの「休憩機能」、道路情報、観光情報、緊急医療情報などの「情報提供機能」、文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設で地域と交流を図る「地域連携機能」があります。駅ごとに地方の特色や個性を表現し、文化などの情報発信や様々なイベントを開催することで利用者が楽しめるサービスも提供しています。「道の駅」の設置者は市町村等で、国土交通省道路局に申請し登録します。

とされています。高速道路のSAPA的な存在であるとともに、地域振興の側面もあり、必ずしも道路距離の長さに比例して置かれるわけではないことが推測されます。


道の駅が多い都道府県

では道の駅が多いのはどこなのでしょう。国土交通省の道の駅案内によると、道の駅は2018年(平成30年)4月25日までに全国に1145か所が登録されており、2019年(平成31年)3月19日には新たに9か所が追加され、合わせて1154か所の道の駅があるようです。このデータをもとにランキングしたものが以下になります。

1 北海道 124
2 岐阜 56
3 長野 50
4 新潟 39
5 兵庫 35
6 和歌山 34
7 岩手・秋田・福島・熊本 33
11 群馬 32
12 千葉・愛媛 29
14 青森・島根 28
16 石川 26
17 大分 25
18 栃木・静岡・山口・高知 24
22 鹿児島 22
23 山形・山梨 21
25 埼玉・滋賀 20
27 広島 19
28 京都・香川・三重 18
31 愛知・鳥取・宮崎 17
34 岡山・徳島・福岡 16
37 宮城・富山・福井・奈良 15
41 茨城 13
42 長崎 11
43 大阪 10
44 佐賀 9
45 沖縄 8
46 神奈川 3
47 東京 1
※2018年からの変動は、北海道122→124、熊本31→33(11位から7位)、大分24→25(17位タイから単独17位)、愛知・鳥取16→17(32位から31位)、宮城13→15(40位から37位)。これに伴い、群馬(10位から11位)、栃木・静岡・山口・高知(17位から18位)、岡山・徳島・福岡(32位から34位)、茨城(40位から41位)の順位変動も発生。

北海道が二位以下にダブルスコアをつけて圧倒的一位。やはり面積があるぶん道の駅も多いようです。全体として面積の大きい県が比較的上位に位置していることは言えそうですが、必ずしも比例してはいなさそう。また、東京に1つ、神奈川に3つしかないことも目を引きます。ちなみに東京にあるのは「八王子滝山」、神奈川にあるのは「清川」「箱根峠」「山北」。東京都心から一番近い道の駅は、千葉県市川市の「いちかわ」や埼玉県川口市の「川口・あんぎょう」かもしれません。


人口と道の駅の関係

さて、単に道の駅の絶対数を比較するだけではなく、人口と道の駅の関係についても計算してみます。2015年国勢調査の人口値をもとに、道の駅ひとつあたりどれくらいの人口がいるのか計算してみました。ちなみに全国平均は道の駅ひとつあたり11.0万人となりました(国勢調査人口127095千人を1154か所で割ったもの)。以下は道の駅あたり人口が少ない(つまり人口に対して道の駅が多い)順に並べたもので、単位は千人、小数第二位を四捨五入した値です。

1 島根 24.8
2 和歌山 28.4
3 高知 30.3
4 秋田 31.0
5 鳥取 33.7
6 岐阜 36.3
7 岩手 38.8
8 山梨 39.8
9 長野 42.0
10 北海道 43.4
11 石川 44.4
12 大分 46.6
13 青森 46.7
14 徳島 47.3
15 愛媛 47.8
16 福井 52.5
17 山形 53.5
18 熊本 54.1
19 香川 54.2
20 福島 58.0
21 山口 58.5
22 新潟 59.1
23 群馬 61.7
24 宮崎 64.9
25 滋賀 70.7
26 富山 71.1
27 鹿児島 74.9
28 栃木 82.3
29 奈良 90.9
30 佐賀 92.6
31 三重 100.9
32 岡山 120.1
33 長崎 125.2
34 京都 145.0
35 広島 149.7
36 静岡 154.2
37 宮城 155.6
38 兵庫 158.1
39 沖縄 179.3
40 千葉 214.6
41 茨城 224.4
42 福岡 318.9
43 埼玉 363.4
44 愛知 440.2
45 大阪 883.9
46 神奈川 3042.0
47 東京 13515.0
※2018年と比べ、15位だった大分が青森・徳島・愛媛を抜き12位に、19位だった熊本が香川を抜き18位に、38位だった宮城が兵庫を抜き37位に、それぞれ動き、それに伴う変動がありました。

まず明らかなのは、人口の多い県が下位にランクインしていること。道の駅が1つしかない東京がぶっちぎりですが、下位5都府県が東京・神奈川・大阪・愛知・埼玉と、人口上位順に並んでいます。他方、上のほうに並ぶ県は人口の少ない県が多いようです。島根県や和歌山県では人口3万人に対して道の駅が1つ以上ある計算。これを東京都に当てはめると400か所くらいになると思うと、ずいぶん多い感じがしますね。


面積と道の駅の関係

次に、面積と道の駅の関係についても計算してみます。2017年国土地理院のデータをもとに、道の駅ひとつあたりどれくらいの面積をカバーするか計算してみました。ちなみに全国平均は道の駅ひとつあたり328平方キロとなりました。以下は道の駅あたり面積が小さい(つまり面積に対して道の駅が多い)順に並べたもので、単位は平方キロ、小数第二位を四捨五入した値です。

1 香川 103.5
2 富山 136.4
3 和歌山 139.0
4 石川 161.0
5 岐阜 174.4
6 千葉 175.3
7 滋賀 188.3
8 埼玉 188.4
9 大阪 190.5
10 愛媛 195.7
11 群馬 198.8
12 山梨 202.6
13 大分 204.0
14 鳥取 206.3
15 熊本 220.4
16 島根 239.6
17 兵庫 240.0
18 奈良 246.1
19 山口 254.7
20 京都 256.2
21 徳島 259.2
22 長野 262.1
23 新潟 265.7
24 栃木 267.0
25 佐賀 271.2
26 福井 279.4
27 沖縄 285.1
28 高知 296.0
29 愛知 301.4
30 静岡 302.2
31 福岡 303.4
32 山形 316.8
33 三重 319.9
34 青森 344.5
35 秋田 352.7
36 長崎 375.7
37 宮崎 399.7
38 鹿児島 411.0
39 福島 417.7
40 岡山 438.2
41 広島 446.3
42 宮城 457.2
43 岩手 462.9
44 茨城 469.0
45 北海道 672.8
46 神奈川 805.3
47 東京 2106.3
※2018年と比べ、33位だった愛知が静岡・福岡・山形・三重を抜き29位に、44位だった宮城が岩手・茨城を抜き42位に、それぞれ動き、それに伴う変動がありました。

こちらも道の駅が1つしかない東京が当然一番下に来ますが、それ以外は面積と道の駅については特に比例しないようです。もっとも、道の駅は性質上同じ面積でも細長い県のほうが東西南北に広い県よりも多く置かれることが想像されますし、あまり面積で比較するのは妥当ではないかもしれません。

なお、上記の計算データは2018年・2019年分ともエクセルデータ化しました。ページ最後部を有料化してリンクを貼りますが、必要でしたらお声掛けくだされば個別にお送りします。


能登と道の駅

本題はここから。能登地方にやたら道の駅が多く感じたのは気のせいかどうか、という話です。ここで能登地方が含まれる石川県のデータをおさらいすると、石川県内には道の駅が26か所(16位)、道の駅あたり人口は44.4千人(11位)、道の駅あたり面積は161.0平方キロ(4位)。ほかの県に比べて少なくはないものの、とびぬけて多い感じはしません。

↓石川県の道の駅。「羽咋」と書いてあるところにある道の駅「のと千里浜」以北を能登地方の道の駅とする。出典:道の駅公式サイト

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さて、ここからは能登地方に絞って計算してみます。能登地方とは、ここでは石川県のうち、羽咋郡宝達志水町より北を指すこととします。(旧能登国には羽咋郡・鹿島郡・鳳至(ふげし)郡・珠洲郡の4郡がありました。このうち羽咋郡には現在のかほく市・津幡町の一部も含まれていたものの、昭和の大合併で加賀国側にある河北郡の自治体と合併したため、これらの地域は加賀地方とみなします。)

具体的には、七尾市・輪島市・羽咋市・珠洲市・羽咋郡の志賀町と宝達志水町・鹿島郡の中能登町・鳳珠郡の能登町と穴水町の4市5町を能登地方として扱います。(下図:赤と黄で塗った範囲が能登地方。「白地図ぬりぬり」で作成)

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人口については石川県のいしかわ統計指標ランドより2015年国勢調査データを、面積については国土地理院の全国都道府県市区町村別面積調(平成30年版)を用いて計算しました。

人口:七尾55348+輪島27205+羽咋21726+珠洲14631+志賀20434+宝達志水13171+中能登17582+能登17576+穴水8793=196466人

面積:七尾318.29+輪島426.32+羽咋81.85+珠洲247.20+志賀246.76+宝達志水111.52+中能登89.45+能登273.27+穴水183.21=1977.87平方キロ

道の駅:いおり・能登食祭市場・のとじま・なかじまロマン峠(七尾市)、輪島・千枚田ポケットパーク・赤神・のと里山空港(輪島市)、のと千里浜(羽咋市)、すずなり・狼煙・すず塩田村(珠洲市)、ころ柿の里しか・とぎ海街道(志賀町)、織姫の里なかのと(中能登町)、桜峠(能登町)、あなみず(穴水町)の計17か所

道の駅あたり人口:11557人 道の駅あたり面積:116.34平方キロ

上の表と比較すると、道の駅あたり人口で1位になった島根県でも24.8千(2.48万)人。人口1万人ちょっとに対して1つ道の駅がある能登地方はかなり道の駅が多いと言えそうです。面積についても、103.5平方キロで1つの道の駅、という1位の香川県にはかなわないものの、堂々の2位相当でした。


ちなみに、「奥能登」と呼ばれる輪島市・珠洲市・能登町・穴水町(かつての鳳至郡と珠洲郡の郡域、上の地図の赤で塗った範囲)に絞ると、人口68205人、面積1130.0平方キロ、道の駅9か所。つまり奥能登では道の駅あたり人口が7578人、道の駅あたり面積が125.56平方キロとなります。道の駅あたり人口7578人というのは、日本全体のファミリーマートあたり人口(7572人)とほぼ同じです!(ファミリーマートは2018年12月31日現在全国に16683店(出典:ファミリーマート)、日本の総人口は2019年1月1日推計で1億2632万人(出典:総務省統計局))

ファミマ並にある奥能登の道の駅、おそるべし。

能登の道の駅

では最後に、能登で立ち寄った道の駅を紹介して終わりにします。

①すずなり (珠洲市)

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2005年に廃止された旧のと鉄道 珠洲駅跡にある道の駅。ホームや線路がありました。周辺には珠洲駅前郵便局など、珠洲駅があった頃を思わせるものがたくさんありました。※のと鉄道廃線跡探訪についてはまた別の記事を書きます。

②狼煙 (珠洲市)

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能登半島の先端にあります。この地域は日本海航路の要衝だったため航海の便のためおおくの狼煙が立っていたことからこの地名がついたそうです。駅内に飲食店はありませんが、道路の向かいには数軒の店があります。

③千枚田ポケットパーク (輪島市)

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世界農業遺産にもなった有名な千枚田があるところ。行きたかったですが、当日はものすごく天気が悪かったためちょっと見ただけで断念しました。夜はライトアップされるそうですね。

④とぎ海街道 (志賀町)

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海沿いに「世界一長いベンチ」と呼ばれる長さ460mのベンチが広がっています(途中で切れているように見えるのは曲がっていることによる)。日本海に沈む夕陽を見てほしい!という熱いボランティアの方々によって作られたそうですが、どうやらすでに世界どころか日本にもこれをこえる長いベンチがあるようです。


このほか旅行中には穴水駅併設でバス待ちに便利な「あなみず」、空港併設の「のと里山空港」も利用しました。全体として、飲食店が入っていない道の駅が多かった印象です。


むすび

能登半島にたくさんの道の駅があることがわかりました。豊かな能登には多くの自然の恵みがあり、それゆえに多くの道の駅があるのかもしれません。ぜひ、みなさんも能登を訪れてみてはいかがでしょうか。

統計の扱いが雑な部分がありますがご了承ください。「こういう要素も検討してみては?」などご意見ご感想お待ちしています!

ご支援賜われましたらこれ以上の喜びはありません!