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『細川幽斎』

タイトル:細川幽斎
著者:桑田忠親
ジャンル:歴史、人物評
発行年月日:1948年(昭和23年)3月1日印刷 3月8日発行
発行元:株式会社日本書院
備考:足利義輝・義昭の二人の室町将軍を支え、信長・秀吉・家康の三人の天下人から信任されて近世細川家の祖となった細川幽斎(藤孝)。戦国武将として乱世の興亡を生き抜く中で若くして歌道に志し、二条家の古今伝授を受けた幽斎は、古典、茶の湯、料理、音曲、礼式、有職故実など、あらゆる学芸の理を究めた。馬と茶の湯を知らぬは武士の恥、と説いた稀代の文人武将の波瀾の生涯をいきいきと論述する。

1948年版

感想

 私は桑田忠親先生の印象について「高度な細川のオタク」と認識しており、非常に憧れとする人物だ。
 この本は日本書院から出版された1948年版を所有している。のち、1996年に講談社学術文庫から同タイトルのものが発行されているが、おそらくは1948年版の文体をより現代に合うよう、異体字や文法をわかりやすく直したものと推察している。手に入れたら確認したいと思う。備考文は、1996年版に付されていたものである。

 内容は備考に示した通りだが、この本にはそれ以上の価値がある。桑田先生の「細川幽斎」に対する、これでもかという「細川幽斎ってこんなにすごいんだぜ!!」の熱意を感じるのだ。目次を見ると、「幽斎と○○」といったように細かく項目を設け、さらに小見出しには幽斎公の成し得た功績、教養への解説、それに伴う逸話など余すところなく紹介し、正直この一冊が読めれば、いかに細川幽斎という人物が「すごい」人であるか理解できると思う。細川幽斎総まとめ本だ。うぃきぺでぃあの勢いだ。幽斎のオタクが幽斎のことを全部まとめた本である。
 桑田先生は考証に関しても信頼が置け、無理なく引用できるものは各項目の中に引用し、典拠がどこであるかも記してくれていることが多い。和歌や連歌については、幽斎公自身やその弟子たちが残したこともあって、かなりの数が記載されている。この一冊で「細川幽斎のできること」と「それにまつわる逸話」がすべて分かるだろう。買って損はなかったし、なにより定期的に読み返したくなる。
 重ねて言うが、桑田先生の幽斎公に対する熱意、さらに言えば愛着のようなものが文の端々に感じられる。
 細川オタクの細川文章、いい薬です。

 私はたまたま1948年版が手に入りましたが、こちらは昭和前期に書かれた文体そのまま、かつ古書であるために扱いが厄介で、読むのにも少々難儀しました。1996年版のほうがまだ比較的手にしやすく、内容も読みやすいことと思うので、これから探す人はそちらを参照されたい。

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