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SDGs定点観測 目標2:飢餓

前回は目標1:貧困について、建設、自動車、食品、保険と多様な業界の取組を紹介しました。

しかし目標2:飢餓(飢餓をなくそう)では何と言っても主役は食品業界です。代表的な取組を紹介します。

不二製油グループ本社

同社は植物性油脂や大豆たんぱくを中心とした商品を展開しています。これだけでお気づきになる読者の方もいらっしゃると思いますが、食肉代替で注目される企業で、食肉代替は飢餓抑制に有効とされています。同社のウェブページでは大豆生産時の水消費量は牛肉生産の8分の1にとどまることが示されています。大豆はそれを育てるための水消費にとどまるのに対し、牛肉の場合は飼料への水消費に加え、牛の水分摂取のために水を多く必要とします。また牛肉は牛がある程度成長しないといけませんので、大豆生産より時間と手間がかかります。

とはいえ、私も肉は大好きなので、すぐに食べるのをやめることはできません。同社は私も含めたそんな消費者向けに大豆で作った代替肉である大豆ミートを開発しています。2010年頃、初期の代替肉をロンドン滞在時で食べたことがありますが、動物性のジューシーさが全くないぼそぼそしたもので、必ずしもおいしいとは言えませんでした。同社の大豆ミートは食感や食べごたえにも工夫を重ね、食肉代替を促進しようとしています。

また大豆ミートは日本国内でのみ取り扱っているものではありません。同社はアフリカのブルキナファソで大豆の現地調達と大豆ミートの現地消費を目的とした調査を開始しています。これが成功すれば、現地の大豆農家の収入向上と現地の消費者の栄養改善を両立が可能になる見込みです。

明治ホールディングス

子会社の明治がベトナムの女性工場労働者の栄養改善を目的に、栄養知識や栄養食品の普及に関するビジネスを展開しています。ベトナムの企業が同社の女性向け栄養強化ミルクを購入し、女性工場従業員へ提供または販売することで、従業員の栄養状態を改善していくものです。同時に従業員への食育を通じて、製品の販売促進・食生活の改善を目指しています。

目標1:貧困同様、この目標も新興国向けがメインで、サプライチェーン配慮や社会貢献の文脈で取り上げる企業が多いです。しかし真に持続可能であるためには、ある程度の収益性が不可欠です。この事業では一部は女性従業員向けに提供していますが、販売も併せて行うことで収益を伴う活動と言えます。

食品業界以外でもこの目標について多くの取組があります。例えば、機械・精密機器業界であれば、農業機械や食品の安全を守るための検査装置、化学業界であれば、肥料や農薬、ビニールハウスなどの農業資材のほか、脱酸素剤や鮮度保持フィルムなど消費期限延伸のための素材が紹介されています。しかし同目標の主眼は食糧危機に陥りやすい発展途上国での取組ですので、上記2社の取組の方がインパクトが直接的で、大きいと言えるでしょう。


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