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旅の行程楽しめる列車旅/焼酎と温泉、ともに楽しめる街/人吉市(無料記事)

 人吉市には2018年10月に訪れ、一連の城下町取材でも印象深い街だっただけに2020年の水害は大変残念でした。人命はじめ、失われたものの大きさに胸が痛みます。記事で紹介したところはほとんどが浸水し、くま川鉄道は全線で運休中で、代替バス輸送をしています(2021年1月現在)。しかし原稿はかつてかいたままを全文無料でアップしています。人吉市が、また球磨川流域が素晴らしい場所だったことをみなさんに知ってもらいたいからです。長閑な旅を思い出させる素晴らしい土地でした。またいつか復旧した人吉を訪ねたいと思います。みなさんもぜひ訪れてください。
 また取材時に撮った人吉周辺の写真特集ページ(列車編お城と街編)もアップしています。合わせてご覧ください。きっと行きたくなります。

★人吉周辺写真特集記事
 素晴らしかった人吉の旅(列車編) 
 素晴らしかった人吉の旅(お城と街編) 

「日本の城下町を愉しむ」一覧
  東日本編
(北海道・東北・関東甲信越)
  中日本編(北陸・東海・近畿)
  西日本編(中国・四国・九州)

★都道府県 熊本県
★城郭 人吉城

 人吉では城下町の話の前に列車の話をさせて欲しい。ここを出発地にした列車の旅がとびきり楽しかったからだ。
 まず、JR九州の熊本駅行き「SL人吉」がある。100年ほど前に造られた蒸気機関車を修復に修復を重ねて運行しているが、間近に見るSLはその熱が伝わり、音や煙や蒸気がさながら生き物のようだ。
 冬期間以外は週末・祝日はほぼ毎日運行しているので予定が立てやすい。近年の客車の改装で、応接間のような展望ラウンジや図書コーナーができ、ビュッフェではキャビンアテンダントが球磨焼酎や弁当、お土産品を販売する。何より嬉しいのは、列車が通過すると沿線の人が皆、ちぎれんばかりに手を振ってくれること。旗や幟を降る人もいる。記念撮影や記念乗車券を購入できる駅もある。
 そして「やませみ・かわせみ」。やはり熊本駅との間を運行する列車で、豪華な内装やバーチャルリアリティを使った沿線絶景鑑賞サービスなどもある。さらに肥薩線の鹿児島方面吉松駅との間を運行する「いさぶろう・しんぺい」は、日本三大車窓の一つ、霧島連山や桜島を望む矢岳越えや、スイッチバック、ループ線を楽しめる列車。景色は荒天でも大丈夫。車内の大型モニターで、晴天時の景色を上映してくれる。途中駅には旧駅施設を利用したレストランやホテルも最近できた。

イラストSL人吉

      日付入り記念プレートと記念写真が撮れる「SL人吉」

 人吉からではないが、鹿児島中央駅から吉松駅までの「はやとの風」、八代から川内の肥薩おれんじ鉄道「おれんじ食堂」など周辺には楽しい列車が目白押し。「おれんじ食堂」は料理の鉄人監修のランチなど、車内の食事が売りだ。
 以上全て車内のデザインは列車デザインでは知らない人のいない水戸岡鋭治氏だ。JR九州では、豪華列車の「ななつ星」ばかりが注目されるが、豪華でなくともじっくり味わう旅を楽しむなら、人吉は狙い目である。
 実は最近までイチ押しの楽しい列車がJR以外であった。第3セクターのくま川鉄道が、人吉温泉駅(JRでは人吉駅)から湯前駅までの湯前線で、はぴねすトレイン「田園シンフォニー」という観光列車を運行していた。やはり水戸岡鋭治氏デザインの車両は「春夏秋冬」プラス「白秋」と5種類あって全て内装が違い、楽しめた。

イラスト田園シンフォニー

      列車内とは思えない「田園シンフォニー」のシート

 主に土日に運行され、始発から終点まで全駅停車し、通常40分少しの区間を1時間25分もかけてゆっくり走った。料金には途中駅のポストで投函する切手付き絵葉書や、ご利益ごとに4駅を選んでかけられる絵馬、2駅でもらえるお土産引き換え券も含まれ、展望ポイントごとに速度を落として車内放送の解説が入った。
 九州山地にぽっかり空いた人吉盆地の東西を結ぶ路線の景色を、ゆっくりゆっくり楽しめ、地元の人のお茶接待や名産販売や、制服を着ての記念撮影や線路に降りて(!)の撮影など、あらゆるおもてなしで楽しませてくれた。
 目的地を慌ただしく移動するだけでなく、行程を楽しむという旅本来の姿を思い出させてくれたのだが。残念ながら採算の関係か2020年で運行が終了してしまった。列車はまだあるので、貸切運行などはできるようだが、個人では難しい。
      ◇
 人吉に来たら球磨焼酎を味わおう。人吉を含む球磨地方の米と水だけを使い、地元で生産瓶詰めしたものだけが「球磨焼酎」を名乗れる。数少ない地名を冠した商標登録が認められた焼酎だ。市内や周辺には、試飲ができる蔵元が数多い。そして蔵元とともに多いのが立ち寄り温泉。蔵元巡りをしながら温泉も楽しめる城下町はそうない。足湯のある蔵元などというものもある。足元に気をつけながらぜひお試しいただきたい。

焼酎

   試飲用に並んだ焼酎の瓶。ここでしか買えない長期熟成酒なども

 城にも必見のものがある。全国でここだけという地下石組遺構だ。謀反で一族皆殺しにされた重臣屋敷の地下から、遺跡整備の発掘で姿を現した。池のような巨大施設は使用目的がわかっておらず、その後2か所目も見つかって話題騒然だ。人吉城歴史館内で中まで案内してもらえる。内郭の石垣は付近の石を利用して実に壮大。球磨川に面した水の手門や、幕末に作られた外側に飛び出した「はね出し石垣」も珍しい。

地下遺構

      人吉城内で見つかった地下遺構

★地図

★人吉市 人口3万人

★城下町へのアクセス
鹿児島空港から高速バスで人吉インタまで50分程度。市街地まではタクシーが必要
JR九州新幹線新八代駅から肥薩線経由人吉駅まで特急「かわせみやませみ」利用で1時間16分
九州道人吉インタ

★観光ポイント
SL人吉 http://www.jrkyushu.co.jp/trains/slhitoyoshi/
やませみかわせみ http://www.jrkyushu.co.jp/trains/kawasemiyamasemi/
いさぶろうしんぺい http://www.jrkyushu.co.jp/trains/isaburou_shinpei/
はやとの風 http://www.jrkyushu.co.jp/trains/hayatonokaze/
人吉城歴史館 https://www.city.hitoyoshi.lg.jp/q/aview/95/249.html
球磨川下り https://www.kumagawa.co.jp/

★情報
人吉温泉観光協会 https://hitoyoshionsen.net/

書籍版「日本の城下町を愉しむ」販売中

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このマガジンの元となっている書籍「日本の城下町を愉しむ」(東邦出版、1600円+税、2019年)を販売しています。
本書ですが、出版元の東邦出版が昨年末に倒産し、現在通常の書店流通では購入できない状態です。長期にわたる取材で苦労して作り上げた本で大変残念です。そこで私の手元にある物を販売させていただこうと思います。本体価格のみ(1600円)、税抜き、送料無料でお送りします。日本の100城下町を独自に選定し、現地を訪れその魅力を紹介しています。食・文化・人物・風景・歴史などガイドブックに載らない蘊蓄が満載です。
ご希望の方は、私のFBサイトから、お名前・住所・できれば携帯番号を書いてメッセージでお申し込みください。代金振込先等をおしらせします。
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